2000 Fiscal Year Annual Research Report
ヨーロッパ連合における組織犯罪及びコンピュータ犯罪対策の研究:EU刑法研究序説
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12720042
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Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
今井 猛嘉 法政大学, 法学部, 助教授 (50203295)
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Keywords | マネー・ロンダリング / コンピュータ犯罪 / ユーロポール |
Research Abstract |
本年度は、上記テーマに関して基礎的な研究を行った。その主たる目的は、EUが上記の犯罪に対して如何なる対策を講じてきたのかを確認し、現在進行中の政策の動向を把握することである。その結果、概ね以下のことが確認された。 現在、EUにおいて加盟各国を代表して警察権限を行使しているのはユーロポールである。そこで先ず、その由来と基本的権限を確認した。ユーロポールは、1992年のマーストリヒト条約を受けた1995年のユーロポール条約(1998年発効)により誕生した機関であるが、FBIのような法執行機関ではなく、情報統合機関である。そこで、本来は、固有の捜査権限を有さず、加盟各国の捜査活動を調整する任に当たっていた。しかし組織犯罪(特にマネー・ロンダリングとコンピュータ犯罪)が加盟各国の国境を越えて頻繁に犯されるに至り、ユーロポールに、より中央集権的・強制的捜査権限を認め、EU域内での有効な犯罪対策を行うべきだとの要請が高まった。そこで、目下、(1)ユーロポールとしての対応を迅速化するため、関連行動の実践、及び関連組織(例えば「欧州司法ネットワーク」、「ユーロジャスト」)を活用すること、(2)加盟各国に対して事実上の拘束力を持ち得る各種勧告を行うこと、が行われている。それぞれにつき補足すれば、(1)としては、EU加盟各国の「共通利益事項」に関して、加盟各国による「共同行動(Join t Action)」が要請され、「犯罪組織へ加入する行為の犯罪化に関する共同行動」等が採られている。(2)としては、にれは、何がEU加盟各国の「共通利益事項」であるかという問題でもあるが)1998年に「近い将来における、組織犯罪対策のための、協力強化に関する75の勧告」が出され、国連国際組織犯罪対策条約の動向をも視野に入れつつ、より効果的な対策が勧告されている。その中には、マネー・ロンダリング防止のため、EU内で営業する銀行に対して出された「犯罪者または犯罪活動とコンタクトする際の行動規範」や、マネー・ロンダリング自体を犯罪化するため前提犯罪との関連性立証を不要とする旨の提言、マネー・ロンダラーの資産に対する没収命令を加盟各国の司法共助により行う制度、インターネットプロバイダに対する、ポルノアップロードの自己規制の勧告案等が含まれている。 これらの政策・提言は多岐にわたると共に、随時、新たな考えが出されていることもあり、常に状況をフォローする必要があるが、来年度は、その中の主要なものにつき、理論的な検討を加える予定である。
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