2000 Fiscal Year Annual Research Report
中国の「村民自治」に関する実証的研究-その歴史的連続と不連続から
Project/Area Number |
12720061
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Research Institution | Aichi Prefectural University |
Principal Investigator |
黄 東蘭 愛知県立大学, 外国語学部, 助教授 (00315871)
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Keywords | 村民自治 / 文献調査 / 聞き取り調査 / 県-郷-村関係 / 国際会議 / 近代中国地方自治言説 / 歴史的連続と不連続 / 論文集収録予定 |
Research Abstract |
初年度は文献・実地調査を中心に研究を進めてきた。その経緯および実績は以下のとおりです。 (1)文献調査。主に人民公社制度崩壊後、中国で「村民自治」が実施される政治的・社会的背景、政策の形成と変遷、および各地の実施状況に関する先行研究について文献調査を行いました。日本国内においては主として日本語で発表された関連の著作・論文が対象となりました。なお、2000年夏、中国の南京、北京で中国語の関連研究を数多く入手し、この分野の中国人研究者と意見交換も行いました。 (2)実地調査。夏休み帰国の際、南京師範大学経済法政学院盛宇華教授を通して、江蘇省小城鎮研究会の若手メンバーの協力を得て江蘇省江寧県禄口鎮を訪れました。江寧県における「村民自治」の具体的な実施状況について聞き取り調査を行い、近年各地で表面化しつつある農民の負担増問題をめぐる「県-郷-村」関係についても意見を聞きました。現在、調査で得た資料に基づいて論文をまとめています。 (3)国際会議への出席と発表。2000年8月21日〜24日武漢で中国社会史学会主催の「経済発展と社会変遷国際シンポジウム」に参加し、「近代中国における地方自治言説の形成と変遷」と題した論文を提出し口頭発表を行い、各国からの研究者と学術交流を行いました。この論文において、筆者は現在の「村民自治」と明末清初期以降の地方政治改革論、清末期の地方自治との間の「歴史的連続と不連続」という角度から、中国における地方自治理論の思想的背景・形成・変遷について考察しました。明末清初期から顧炎武らがすでに中国の政治制度に内在する「上下隔離」の問題を解決するための方策を模索しつづけ、清末期に入ってから、その思想的蓄積は西洋・日本から輸入された「自治」、「地方自治」という表現を用いて結実した、という結論を得ました。この論文は現在華中師範大学歴史文化研究所編纂中のシンポジウム論文集に収録される予定です。
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