2000 Fiscal Year Annual Research Report
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12730010
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
加井 雪子 (長谷川 雪子) 新潟大学, 経済学部, 助教授 (20303109)
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Keywords | 内生成長 / 不況モデル |
Research Abstract |
本年度は動学最適化の枠組みにおいて内生成長モデルと不況モデルを統合させることを目的とした。想定したモデルのメカニズムは以下の二種類である。まず、公共財を使用する内生成長モデルを使用し、不況のときには税収の落ち込みによって生産性が減少し需給ギャップが拡大しない経路があることを確認した。しかし、実際には不況時には逆に公共事業の拡大等の景気浮揚政策が行われ、生産性の増大が起こる可能性がある。このときは、政策は需要創出と生産力拡大の二つの効果を持つがこの場合には解が不安定であることが確認された。それは、通常の合理的期待形成を行う家計であれば、クラウディングアウトにより需要創出が打ち消されるからである。 また、第二に、消費財のバリエーションが増大する内生成長モデルを想定した。この場合、消費財が開発され続けて消費に対する限界効用が貨幣の限界効用同様に高止まりすれば内生成長が生じながら需給ギャップが拡大しない経路が存在する可能性があることが示された。これは不況モデルに対するひとつの処方箋として非常に興味深い結果だと思われる。しかし、いくつかの改善すべき問題点が存在することも明らかになった。まず、効用に関してSpenceとは異なり、消費財の種類に関して一次同次の効用関数を想定しなくてはならないことが挙げられる。これは、消費総量に関して限界効用が逓減する限り、消費量が伸びない不況均衡に陥るからである。また、利子率は生産サイドできまるために、利子率の均等式が成立するかどうか、成長するかどうかは、生産サイドのナイーブな仮定に左右されている可能性があるということである。以上のような問題点が含まれているとはいえ、第二番目のモデルビルディングは、現実妥当性からいっても興味深いものであるといえる。よって次年度は特に後者のモデルの更なる分析と景気循環に対する応用を行いたいと考えている。
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