2000 Fiscal Year Annual Research Report
20世紀前半イギリスの福祉国家形成をめぐる国内・国際問題の社会経済思想史的研究
Project/Area Number |
12730014
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Research Institution | Aichi Prefectural University |
Principal Investigator |
江里口 拓 愛知県立大学, 文学部, 助教授 (60284478)
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Keywords | 福祉国家 / 国際競争 / ウェッブ / ベヴァリッジ / ナショナル・ミニマム / コレクティヴィズム / 20世紀前半 / イギリス |
Research Abstract |
現代の福祉国家は,国際競争の激化,成長率の低下という状況の中で,新たな再編を迫られている。こうした課題に対し,福祉国家形成期,すなわち20世紀前半の経済学者は,いかなる解答を準備していたのであろうか。こうした問題意識から,その準備作業として,世紀転換期に活躍したウェッブ夫妻の社会経済思想を研究してきた。その主な内容は,労働組合論,ナショナル・ミニマム論,協同組合(非営利組織)論,地方自治論,国際貿易論に分類される。彼らの経済思想は,これまで国家の役割を重視した「社会主義」と理解されてきた。こうした理解に対し,本研究では,ウェッブが,中間団体による「相互扶助」(=団体的自助)を重視し,その条件整備のために国家によるミニマム支援を行うという二重構造をもった構想を有していたことを明らかにしてきた。彼らの福祉国家(社会)思想は,国家から独立した中間団体の役割を重視した一種の「福祉の混合経済論」(P.セイン),すなわち「コレクティヴィズム」として理解しうるのである,というのが,現在の一応の到達点である。 1999年には,それまでの研究成果を博士論文「初期ウェッブの社会改革構想-進歩・効率・自由とコレクティヴィズムー」九州大学)としてまとめた。さらに,現在,本研究費のもとで,20世紀前半におけるウェッブ,べヴァリッジらの福祉国家をめぐる国内・国際問題との関連についての研究を進めており,本年度は,その成果の一部を,「自由貿易とナショナル・ミニマム-世紀転換期におけるウェッブの所説をめぐって-」という形で公表した。
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Research Products
(1 results)