2000 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12730019
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
古澄 英男 北海道大学, 大学院・経済学研究科, 助教授 (10261273)
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Keywords | カウントデータ / ベイズ推定 / 標本選別 / マルコフ連鎖モンテカルロ法 |
Research Abstract |
平成12年度は研究実施計画にしたがい,まず標本選別を考慮したカウントデータに対する計量モデルのサーベイを行った.これまでにいくつかのモデルが提案されているが,本研究ではTerza(1999,Journal of Econometrics)によって提案されたカウントデータモデルにもとづいて分析をすすめることにした.この考察したモデルの特徴は,説明変数に0あるいは1の値をとる離散変数が存在し,この変数の値によって経済主体の行動が変化することを明示的に取り入れている点である.より具体的には,経済主体が自動車を所有しているかどうかによって,データとして1(所有)あるいは0(所有していない)を記録し,この値に応じてレジャーに対する需要行動がどのように異なるかを記述したモデルとなっている. Terza(1998)では,数値積分を利用した最尤法による推定方法を提示している.しかし,彼の行った実証分析の結果では,パラメータの推定値が理論上許容されない値を取るなどいくつか問題点が存在する.そこで,本研究では最尤推定法ではなく,マルコフ連鎖モンテカルロ法をベイズ推定の枠組みの中で適用することにより,既存の問題を克服することを試みた.さらに,マルコフ連鎖モンテカルロ法を効率的に行うためのアルゴリズムの開発も行っている.数値実験や実際のデータによる実証分析を通して,本研究で提案された推定方法は,(1)数値積分を利用せずに比較的簡単にモデルの推定を行うことができる,(2)全てのパラメータを理論と整合的に推定可能である,ことが示され,これまでの推定上の問題が克服されることが分かった.また,本研究で用いられたアルゴリズムは,非常に効率的に機能することも同様の数値実験から分かった. 上述の推定方法の開発だけでなく,本研究では,説明変数と被説明変数との間に相関があるかどうかの検定やモデルの診断に対する方法を提案している.さらに,経済主体の不均一性に対してt-分布を仮定することによって,既存のモデルの拡張も試みている.これらに関しても,数値実験などで非常に良好な結果を得ている. 本研究はこれまでの研究成果を発展させており,カウントデータを利用した実証分析を行う上で有益であると考えられる.
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