2001 Fiscal Year Annual Research Report
情報技術の発展時における最適な知的財産権法の経済分析
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12730031
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Research Institution | National Graduate Institute for Policy Studies |
Principal Investigator |
畠中 薫里 政策研究大学院大学, 政策研究科, 助教授 (10265556)
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Keywords | 知的財産権 / ライセンス契約 / ナッシュ交渉解 |
Research Abstract |
(1)昨年度に始めた「特許における早期公開制度の経済学的意義」という論文の改訂作業を行い、平成13年5月の日本経済学会春季大会で、6月には、応用空間経済理論研究会(於:政策研究大学院大学)、11月には、Law and Economics Workshop(於:東京大学)で報告した。内容:平成11年公布の特許法改正によって、全ての出願が自動的に出願日より18ケ月後に公開されていたのが、出願者の申請があれば、それより前に公開できることになった。この早期公開によって、出願者が自分の技術のタイプをシグナリングできることを示し、早期公開制度がより利用されるためには、早期公開者の特許審査を早めること、補償金請求権を行使したときの実施料率を高めることが必要であるという政策提言を行った。(2)「司法制度と特許権の最適範囲」という論文を「知的財産権制度とイノベーション」ワークショップ(一橋大学イノベーション研究センター主催、出版計画あり)で3月16日に報告した。内容:国によって、産業によって知的財産権のエンフォースメントの強さは異なる。組立製造業においては、製薬産業などと違って差止を完全に遂行するのは困難であるし、国によって、裁判費用の大きさは異なる。本稿では、エンフォースメントの強さの指標として、裁判費用の大きさ、差止の成功確率、損害賠償請求時の賠償金獲得確率を用いて、最適な知的財産権の保護の範囲が既存の司法制度によってどのように異なるのか、どのような司法制度と特許権の範囲の組み合わせが社会的に最も望ましいのか理論的に明らかにした。その結果、裁判費用が十分低い場合は、差止(損害賠償)の成功確率が高い場合は差止(損害賠償)を行い、特許権の範囲は十分広いほうがよいが、裁判費用が非常に高い場合は、技術の利用自体が起こらないため、特許権の範囲は狭めたほうがよいという結論が得られた。
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