2000 Fiscal Year Annual Research Report
ロシアにおける市場形成過程での企業構造・行動・銀行制度の変化に関する実証的研究
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12730032
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
小西 豊 岐阜大学, 地域科学部, 講師 (10303489)
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Keywords | 移行経済 / コーポレートガバナンス / 市場経済化 / 金融産業グループ / 独占禁止法 / 競争政策 / インサイダーコントロール / 自然独占体 |
Research Abstract |
当初の「研究計画」に沿って、以下の研究課題に取り組んだ。 1.移行期ロシアにおけるコーポレート・ガバナンス問題 民営化後の現代ロシア企業の特質を「所有・支配・経営」の側面から照射し、新しい経済主体の構造と行動様式を実証分析した。この研究によって、移行初期のインサイダー(旧国有企業の経営者と労働者)支配は弱まりつつあり、アウトサイダー(新興企業、外国企業、機関投資家)支配の傾向を株式所有比率の高まりや資本市場の成熟によって確認することができた。今後の研究の展開として、企業統治構造、企業管理システム、労使関係システムの国際比較(アングロアメリカン型、ドイツ型、日本型、ロシア型)を予定しているので、本年度はまずロシア型の研究から着手した。 2.ロシアにおける鉱工業と独占企業に関する研究 1997年ロシアの実質GDPは0.4%のプラス成長に転じた。体制転換以来続いたロシアの投資危機を総括的に検討すべく、以下の3つの項目の考察を行った。 (1)鉱工業生産の動態;1990年から96年の7年間で鉄鋼業、非鉄金属、化学・石油化学、食品工業は約半分に、機械・金属加工、林業、木材加工、紙パルプ、建設資材は約3分の1まで下落した。そのなかでも低下が最も深刻なのは、軽工業(繊維・衣類・履物など)である。 (2)産業政策;ロシアには産業構造の調整を援助するための構造調整政策が不可欠である。衰退産業を保護するために輸入関税は引き上げられたものの(消極的調整政策)、長期的かつ戦略的な成長産業を支援し雇用を確保する目的での独占企業の解体と中小企業の育成、R&A、産業技術の近代化など(積極的調整政策)は実施されなかった。 (3)金融・産業グループと自然独占体;独占企業は独占禁止法によって禁止されるが、生産低下と投資危機に対応するため、政府によって容認される独占体が存在する。そのひとつはガスプロムに代表される自然独占で、国際市場における価格面で比較優位にある資源産業を軸として形成された。もうひとつは、自然独占に対する規制の動きが準備され始めた1994年から、それと代わるように投資・生産主体として政府が構想、形成してきた金融産業グループの存在である。
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Research Products
(2 results)