2000 Fiscal Year Annual Research Report
東アジア諸国の経済発展に於ける政府の役割の実証分析-中国経済への計量的接近-
Project/Area Number |
12730035
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
矢野 剛 徳島大学, 総合科学部, 講師 (90314830)
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Keywords | 中国経済 / 郷鎮企業 / 集団所有制 / 効率性 / 生産性 / 所有権 / 金融システム / 資金 |
Research Abstract |
平成12年度科学研究費補助金の交付を受けた研究において、我々は以下のような研究成果を得た。 一つ目は、近年不振を伝えられる中国郷鎮企業のパフォーマンス下落の数量的な計測とその要因の探求である。中国江蘇省無錫市の郷鎮企業を多数含んだ企業マイクロデータを用いた生産関数推定、その他の回帰分析をおこなった。研究結果として、我々は中国郷鎮企業の生産性は、時系列的には近年上昇幅が鈍っているものの、その他の企業と比較して十分に高い水準にあることを見出した。また生産性上昇率が下落している主要因も、それら郷鎮企業の資金不足、すなわち貸し手側の貸し渋りにあり、問題は郷鎮企業内部にあるというよりも外部、すなわち中国の企業金融システムにあることを我々の計測結果は示唆している。この研究については国際学会で2回・各種研究会で2回の報告がおこなわれており、報告論文の初期版('Chinese Township and Village Enterprises'Productivity and Its Change after the1990s:Using Wuxi's Micro Data in 1991-1997')が既に国際学会プロシーディングに掲載されている。 二つ目は、管轄する地方政府レベルが異なることによる(より上級の地方政府営の郷営郷鎮企業と下級地方政府営の村営の郷鎮企業)、また中国国内での立地地域の差異(先進的な沿岸地域か後進的な内陸地域か)による、各郷鎮企業の生産性比較という研究をおこなった。これは、郷鎮企業の「不振」 の主要因が、資金の不足にあるのか資金過剰(による予算制約のソフト化)による効率性低下にあるのかを、マクロデータを用いて確認する目的をもっている。結果として資金の不足こそが原因であることが確かめられ、これは一つ目の研究の結論を補強するものとなった。
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