2000 Fiscal Year Annual Research Report
日本の金融政策の有効性:企業間信用取引による減殺効果は存在するか?
Project/Area Number |
12730054
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Research Institution | Fukushima University |
Principal Investigator |
大野 政智 福島大学, 経済学部, 助教授 (60302311)
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Keywords | 企業 / 金融 / 金融市場 / 商社 |
Research Abstract |
日本で、総合商社は、マクロ的に見て無視できない規模である。98年度、大手総合商社9社の合計売上高は、71兆円で、GDPの14%に匹敵する。また、その販売や仕入において、代金の回収や支払の延期による取引先との資金繰りの調節(企業間信用の与信や受信)を活発に行っているのも、流通業としての総合商社の特徴である。 そこで、これら9社の企業会計から企業間信用の時系列的特徴を調査した。これによると、1年間(4月〜翌年3月)の売上高に対する当該年度末決算時の与信残高(=売掛金+受取手形+前払金+受取手形割引・裏書譲渡高)の比率は、1970年度の36%から低下傾向にあり、そのボトムは、93年度で12%であった。その後98年度までの5年間は、やや上昇傾向にあり、98年度では14%となった。同様に、1年間の商品仕入高に対する年度末決算時の受信残高(=買掛金十支払手形+前受金)の比率も、93年度をボトムとして、70年度の26%から93年度の9%へと低下し、その後は、やや回復基調にあり、98年度では10%となった。 93年度までの与信・受信両者の低下傾向は、金融市場の発達と共に、金融市場に対する企業間信用の代替的役割が低下したためであると推察できる。一方、93年度以降の与信・受信両者の上昇基調では、金融不安や金融機関の貸渋りの中で、企業間信用の金融上の代替的役割が高まってきた可能性がある。 今年度は、データ収集と文献調査に、多くの時間が割かれた。特に、データ項目の選定は、企業会計の規則や記載上の慣例と一致するように注意を払った。また、金融政策については、歴史的に未決着な議論(マネーサプライは制御可能な政策変数か?)があり、中央銀行の意図を単純に定量化することは難しいことがわかった。来年度は、計量的分析を中心に、企業間信用量変動の原因究明と、金融市況との対応関係についてさらに調査していきたい。
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