2000 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12730095
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Research Institution | University of Shizuoka |
Principal Investigator |
森 勇治 静岡県立大学, 経営情報学部, 助手 (90295569)
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Keywords | 特殊原価概念 / 意思決定 / コストベネフィット分析 / 埋没原価 / サンクコスト効果 / 説明的研究 / 限定合理性 |
Research Abstract |
本研究における目的は、認知科学などの隣接諸学の視点から、会計学(原価計算論・管理会計論)の伝統的な議論に対する批判を行い、説明的研究を試みることである。本研究の対象として特殊原価概念(意思決定原価概念)の一つであるサンクコスト(埋没原価)を選択した。 サンクコストは会計学の規範的理論において、意思決定(コストベネフィット分析)から除外されるべきと理解されてきた。しかし現実には、このような規範から外れた意思決定が見られる。会計学の中心的な研究である規範的な研究では、このような行動について説明することは出来ず、ただ規範から外れていると指摘するのみである。そこで本研究ではこのサンクコストを意思決定において考慮しているのは何故かという点に踏み込み、その理由を理解し説明した上で、その管理手法について考察する。 研究採択の初年度である本年度の成果として、サンクコスト概念についての会計学と認知科学などの隣接諸学における既存研究を以下のように整理した。 (1) 会計学において、現在の特殊原価概念を構成する諸概念(差額原価、機会原価、サンクコストなど)が議論されたのは主に1950年代から60年代にかけてであり、1970年代に特殊原価の諸概念の体系化が図られた。 (2) 認知科学やその影響を受けた組織行動論、また組織の経済学においては、このような規範的な立場からの会計学の理解とは異なった議論が1970年代半ばから現在まで見られる。すなわちサンクコストが意思決定において考慮されている点についての説明的な研究が行われ、そこでは認知的不協和からの説明や、取引特定資産によるロックイン効果による説明が行われてきた。大きく分けて、サンクコスト効果は合理的な意思決定の結果であると考える立場と非合理的であると考える立場からの説明が可能である。
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Research Products
(1 results)