2000 Fiscal Year Annual Research Report
ランダム媒質中のランダム・ウォークに関する漸近的性質
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12740067
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
濱名 裕治 九州大学, 大学院・数理学研究院, 助教授 (00243923)
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Keywords | ランダム・ウォーク / 多重点 / 大偏差原理 |
Research Abstract |
本年度の研究目的であった正方格子上のランダム・ウォークの道の多重点の個数に関する大偏差原理は、形式的には得ることができ、それは訪問点の個数の場合と同様な挙動をすることがわかった。しかし極限に現れるエントロピー関数が当然満たすべき性質は得ることができず、その問題の一つはエネルギー関数の原点での右微分の正値性を調べる問題に帰着されることがわかっている。同様の問題が訪問点の個数の場合にも現れたのであるが、この場合、訪問点の個数の時刻に関する単調性をうまく使って、面倒な極限交換を回避することができた。ところが、多重点の個数の場合には時刻に関する単調性がないので、同様の方法を用いて回避することが困難であり、極限の順序の交換をうまく行わないといけない。このことは、大きな壁として今でも立ちはだかっている。一般に極限定理という研究分野では、得られた極限値(あるいは極限関数)がつまりゼロであっては意味あるものと考えることができない。つまり、極限値がゼロでないことを証明して初めて結果といえるものになる。これは、大偏差原理を考える際にも言えることであり、したがってエントロピー関数が恒等的にゼロであることを否定し得ない以上、公表に値する結果でるとは言えない。 また、多重点の個数のラプラス変換についても、訪問点の個数のラプラス変換のDonsker-Varadhan型の定理と同様の挙動であることを示すことが同時に必要となるのであるが、Donsker-Varadhanの論文で提示されている方法が使えるかどうかをもう少し掘り下げて調べる必要があり、このことは現在取り組んでいる最中である。
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Research Products
(1 results)