2001 Fiscal Year Annual Research Report
完備リーマン多様体上のシュレディンガー発展方程式の解の大域的構造
Project/Area Number |
12740098
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
土居 伸一 筑波大学, 数学系, 助教授 (00243006)
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Keywords | シュレディンガー方程式 / 完備リーマン多様体 / 平滑効果 / 測地流 / 基本解 |
Research Abstract |
シュレディンガー発展方程式は、非相対論的量子力学において粒子の運動を記述する基礎方程式であり、その基本解の特異性の解析およびパラメトリックス(又は基本解)の構成は、スペクトル・散乱理論と並ぶ基本的な問題である。本研究では、漸近的に平坦なリーマン多様体上におけるシュレディンガー方程式の基本解の特異性を、それに付随した解作用素の平滑効果の研究を通して解析することを目標とした。ここで平滑効果とは、シュレディンガー発展方程式を代表とする分散型波動方程式に対して、その解の滑らかさが時間が正になると初期値の滑らかさより上昇する現象を意味している。数年前、研究代表者は、この現象の関数解析的構造を理解する為に、ヒルベルト空間における分散型発展方程式に対する平滑効果の抽象理論を構築した。そして昨年度は、この理論を完備リーマン多様体上のシュレディンガー発展方程式に適用する際に必要となる、交換子代数と擬微分作用素代数との関連をまず研究し、さらに超局所解析的手法を用いることにより、電磁場ポテンシャルが有界な場合に測地流の大域的挙動と超局所的平滑効果との関連について精密な結果を得た。本年度は電場ポテンシャルが高々2次のオーダーで増大をし、磁場ポテンシャルが高々1次のオーダーで増大する場合にも、これらの増大オーダーに依存した短い時間においてはポテンシャルが有界な場合と同様の結果が成立することが証明できた。さらにシュレディンガー発展方程式の解に対して、測地流で捕捉された集合においても、これまで知られていない特異性の伝播現象が生じる場合があることを簡単な例で確認した。この仕組みを解明することが今後の課題である。
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