2000 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12740118
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
中本 泰史 筑波大学, 物理学系・(計算物理学研究センター), 助手 (60261757)
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Keywords | 輻射輸送 / 宇宙の再電離 / 輻射流体力学 / 重力収縮 / 褐色矮星 / 原始星 / スペクトルエネルギー分布 |
Research Abstract |
本研究では,原始星を構成している中心天体,星周円盤,エンベロープなどの構造を,輻射エネルギースペクトルの観測から推定することを目指している.そのためには,2次元および3次元空間内における輻射輸送,それによるエネルギー輸送,および温度構造の決定を正確に行う必要がある.本年度は,それらの数値シミュレーションプログラムの開発に取り組みつつ,部分的ながら完成したコードを応用し,原始星系に限らず輻射輸送が重要な役割を担うさまざまな問題の数値シミュレーションを行った. 最初の応用は,非一様密度宇宙の再電離過程のシミュレーションである.宇宙は誕生後およそ10億年(赤方偏移Z〜5)前後の時に,電離光子によって電離されたと思われる.この電離過程は,その後の銀河形成に大きな影響を及ぼす.我々の3次元輻射輸送シミュレーションの結果,一様な密度分布の宇宙の場合と,密度分布が非一様の宇宙の場合とで,宇宙の再電離の仕方に違いが生じることがわかった.すなわち,一般に密度の非一様性は,電離の進行を遅らせる効果があることが明らかとなった.このような3次元シミュレーションは,世界で初めての試みである. 次に,銀河系内の星形成過程の一過程として,フィラメント状星間雲の重力収縮過程を,1次元軸対称輻射流体力学的にシミュレーションした.その結果,等温収縮から非等温収縮に移行する条件として,従来の単純な考え方とは異なる条件を見いだした.またその条件を用いて分裂片の質量を見積もると,宇宙に誕生する褐色矮星の質量には下限値が存在すること,それは母胎となる星間雲の温度・加熱機構に依存していること,などがわかった. 次年度は,2次元輻射平衡シミュレーションに取り組み,原始星系の現象論的モデルの構築を試みる予定である.
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Research Products
(3 results)
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[Publications] Nakamoto,T.,Umemura,M.,& Susa,H.: "The Effects of Radiative Transfer on the Reionization of an Inhomogeneous Universe"Monthly Notices of the Royal Astronomical Society. 321. 593 (2001)
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[Publications] Nakamoto,T.& Ogochi,K.: "Minimum Mass of Brown Dwarfs"in Planetary Systems in the Universe, IAU Symposium no.202. (in press). (2001)
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[Publications] Nakamoto,T.,Umemura,M.,& Susa,H.: "3D Radiative Transfer Effects on the Cosmic Reionization"in Physics of Galaxy Formation. (in press) . (2001)