2000 Fiscal Year Annual Research Report
可視光及び近赤外線高空間分解能分光観測による原始銀河候補天体の詳細研究
Project/Area Number |
12740126
|
Research Institution | National Astronomical Observatory of Japan |
Principal Investigator |
高田 唯史 国立天文台, ハワイ観測所, 助手 (10300708)
|
Keywords | 銀河形成 / 初期宇宙 / 宇宙論パラメータ / 超赤色天体 |
Research Abstract |
本年度は原始銀河候補の天体のうち、主に非常に赤いカラーを持つものの同定及び分光観測を目的とした研究を行った。この種の天体を最初にターゲットにした要因はいくつかあるが、その一つは本研究において主に使われるすばる望遠鏡が、世界的にみて大口径望遠鏡が持つものとしては比較的広い視野(2分角視野)を持つ赤外線カメラであるCISCO(Cooled Infrared Spectrograph and Camera for OHS)を装備しているからである。 超赤色天体の同定は、既にハップル宇宙望遠鏡で非常に深い可視光域での撮像観測が行われているいくつかの領域について、CISCOによるKバンド(約2ミクロン辺りの波長バンド)での2-3時間程度の深い撮像(Kバンドで22等程度の深さ)によって行われた。観測した領域はいずれもX線の観測で比較的明るい(つまり重力的に重い)銀河団を含むところである。これは、銀河団の大きな重力ポテンシャルの影響で背景にある暗い銀河が重力レンズ効果によって拡大されたり明るくなるため、非常に遠方にあって、大望遠鏡をもってしても通常は検出できないレベルの天体を検出可能になるためである。今回の観測での大きな発見は、赤外線の波長でのみ明るい(可視光のバンドでは検出できていない)レンズ効果を受けたと思われる形状(アーク状に連なる形)の超赤色天体を発見したことである。 現在この観測データの解析をほぼ終了し、論文の作成を開始したところである。また、この銀河団には可視光でも受かっているもう一つのアーク状の構造が検出されていて、これら2つのアーク状構造を可視光及び近赤外線で分光し、それらの赤方変移を決めることでレンズモデルの解析から宇宙論的なパラメータなどを求めることもできることから、現在これらの分光観測の準備を始めているところである。この分光観測を3次元的に行うことで、重力レンズ効果で引き延ばされた高赤方変移の天体のガスの励起状態や星の系の運動などを詳細に、しかも高空間分解して調べることができるはずであり、来年度の主な目標の一つとして考えている。
|
Research Products
(1 results)