2000 Fiscal Year Annual Research Report
「水溶液/半導体」界面における水分子の協調的な振舞いを利用した反応制御
Project/Area Number |
12740174
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
赤木 和人 東京大学, 物性研究所, 助手 (50313119)
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Keywords | 固液界面 / 水 / 水素結合 / 解離吸着 / 第一原理分子動力学計算 / シリコン / 酸化膜 |
Research Abstract |
本年度はSi(001)面を対象に作用する水分子の量を階層的に変化させて、密度汎関数法に基づく第一原理分子動力学計算を行ない、次のような性質を明らかにした。 (1)Si(001)面におけるダングリングボンドの存在により、表面近傍の水分子が通常に比べてプロトンの放出が著しく容易な状態になる。これは、表面状態の2つのダングリングボンドと水分子(群)の分子軌道に対するフロンティア軌道理論の適用でうまく解釈できる。 (2)これに伴う反応性の増強はほぼ全てのダングリングボンドが消失するまで保たれるが、-Hや-OHで終端された表面は、もはや界面の水に対してなんらの化学的な影響も及ぼさなくなる。 (3)「表面」の影響は、最大で水の吸着第4層まで到達する。また、4分子プロセスが関わる温度が400Kのイベントに見られるように、環状のプロトン伝達経路が確保されたとき(逆方向の電子伝達経路が分子軌道的に確保されたときとも言えるが)に、数十fsという非常に短い時間領域で、一気にプロトンリレーが起こる。 (4)水の解離吸着に引き続いて期待されるウェット酸化プロセスは、完全なSi(001)表面では動力学的にも電子論的にも進行が困難であり、欠陥やステップといった表面構造が溶存酸素のような他の分子種の存在が不可欠である。 さて、水素結合中のプロトンは、古典的粒子として定性的に妥当な記述を与えているように見えるが、いくつかのケースにおいて断熱ポテンシャル面からゼロ点振動のエネルギーを見積ると、量子効果があらわれてもおかしくない。予定よりも少し遅れているが、是非とも経路積分法を用いた評価によって通常の水素結合との差違を明らかにしたいところである。また、応用的には良質の極薄シリコン酸化膜の形成法の確立が急務となっており、サイズ的にも第一原理計算で取り扱い可能な領域であるため、13年度はウェットプロセスの観点から表面の構造と酸化膜の成長の関係も取り扱いたい。
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Research Products
(1 results)