2000 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12740175
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小林 研介 東京大学, 物性研究所, 助手 (10302803)
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Keywords | 量子ドット / 電子の位相 / 近藤効果 / 電子相関 / 微細加工 |
Research Abstract |
本研究の課題「低次元ナノ構造における量子干渉効果と電子相関」において、精度の高い信頼できる実験を行うためには、まず低次元ナノ構造を再現性良く作り出すことが必要不可欠である。申請者は低次元ナノ構造として「量子ドット」を用いている。量子ドットはAlGaAs/GaAsヘテロ接合内に形成された二次元電子系を微細加工することによって、1ミクロン四方の領域中に数十個の電子を閉じ込めたものである。この構造は、含まれる電子を一個ずつ制御でき、いわゆる単一電子素子として働く。本年度の計画は、単一電子素子としての量子ドットの作製方法を確立し、クーロン振動や近藤効果の観測を通して、基本的な動作特性を明らかにすることであった。実際に、申請者は既存の分子線エピタキシー装置(MBE)を用いて、高品質の二次元電子系の作製を試みた。さらに、電子線リソグラフィ・フォトリソグラフィ・蒸着装置を用いて様々な条件下で二次元電子系を微細加工することにより、これまでに比べて遥かに再現性良く量子ドットを作製することに成功した。また、この量子ドットを現有の希釈冷凍機に組み入れて極低温下での輸送特性を調べたが、特徴的なクーロン振動(ゲート電圧によって試料の電気伝導度が大きく振動する現象)がはっきりと見られ、確かにこの構造が単一電子素子として働くことを明らかにした。近藤効果についてはその兆候が得られた段階である。このような測定は非常に微小な信号を捕らえなければならないが、申請者は補助金で購入した「ITHACO preamp 1211」をアンプとして用いた。また、ゲート電圧の制御にはやはり補助金で購入した「WF1946(エヌエフ)」を用いた。本年度はこれらの実験を通じて、2年目の課題である量子干渉効果と電子相関の観測と制御に向けて十分な足がかりを得た。
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