2000 Fiscal Year Annual Research Report
ヨウ素を挿入したカーボンナノチューブのヨウ素129メスバウアー分光による研究
Project/Area Number |
12740180
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
北尾 真司 京都大学, 原子炉実験所, 助手 (00314295)
|
Keywords | カーボンナノチューブ / ヨウ素 / メスバウアー効果 |
Research Abstract |
本研究では放射性同位元素である^<129>Iを用いる必要があるため、まず微量でしか扱えない^<129>Iを単層カーボンナノチューブ(SWNT)をマット化した試料に挿入する手順を確立した。また、^<129>Iのメスバウアー効果を測定するためのガンマ線源として用いるため、合成したMg_3^<128>TeO_6を京都大学原子炉で4〜5週間の中性子照射を行い、^<129m>Te線源を作成した。そして^<129>Iを挿入した試料について、その濃度を変化させるごとにメスバウアー効果を測定し、ヨウ素の化学形態および電子状態について解析を行った。その結果、SWNT中でヨウ素は濃度が高い領域ではI_3^-、I_5^-およびI_2として存在していることが分かった。また濃度を薄くするにつれて、I_5^-およびI_2の割合が減少し、I_3^-の割合が増加するばかりでなく、新たにI^-の状態で存在するものも現れることが分かった。SWNT中で希薄なヨウ素がI^-の状態で存在することはこれまでには確認されておらず、本研究により初めて明らかになったことである。さらに、濃度を非常に希薄にするとヨウ素は純粋にI^-だけの状態になることも分かった。このことは、ポリアセチレンなどの導電性高分子に挿入されたヨウ素もI^-として一部存在するが、比較的希薄な領域でもI_3^-の状態が残ることと対照的である。SWNTと同様のグラファイトシートの骨格を持つC_<60>などのフラーレンでは、挿入されたヨウ素がI_3^-などの電子受容体としてだけでなくI^+といった電子供与体のヨウ素も含まれることが知られているが、SWNTでは電子供与体は存在していない。すなわち、SWNTへのヨウ素の挿入による電荷移動の形態は同様の骨格を持つフラーレンよりは、ポリマー状の導電性高分子と同様の形態を示すが、I^-の状態で比較的安定に存在するなどのこれまでにない特徴を持つということが明らかになった。
|