2000 Fiscal Year Annual Research Report
強相関系超伝導体の1K以下における走査トンネル分光
Project/Area Number |
12740206
|
Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
金子 真一 東京工業大学, 大学院・理工学研究科, 助手 (40301171)
|
Keywords | 強相関電子系 / 走査トンネル顕微鏡 / 走査トンネル分光 |
Research Abstract |
本研究は^3Heを用いた走査トンネル顕微鏡で1K以下の低温において強相関系超伝導体の電子状態を走査トンネル分光法により調べるものである。これまでに温度が0.45K、磁場が6Tまでの状況で操作できる走査トンネル顕微鏡を開発してきた。今年度の研究ではこの測定装置を用いて強相関系の超伝導体で転移温度が14Kのホウ素炭素化合物YNi_2B_2Cにおいて0.46Kまでのトンネル分光を行った。この物質ではこれまで磁場中比熱などの測定からクーパー対の軌道対称性がs波ではないとの指摘がなされており、この物質における電子状態を調べることが重要な課題としてあげられていた。トンネル分光による測定では超伝導の準粒子状態密度を直接測定しているが、測定データは有限温度の効果によってなまってしまうので測定温度はできるだけ低いほうがよい。その点今回測定した0.46Kは超伝導転移温度に対しては約1/30であり、十分低温であるといえる。測定は液体ヘリウム温度で試料を割ることにより清浄表面を準備し、ロックイン増幅器を用いて微分伝導度を直接測定した。低温におけるトンネルスペクトルは明確な超伝導ギャップがみられ、フェルミエネルギーのところに準粒子状態密度がないことを示していた。すなわちYNi_2B_2Cの超伝導秩序変数に節がなく、クーパー対の軌道対称性がs波であるということがわかった。またトンネルスペクトルの形は超伝導ギャップの値が一つだけでは説明がつかず、超伝導の秩序変数が異方的であることがわかってきた。次年度は他の強相関系超伝導体についての走査トンネル分光も行っていく予定である。
|