2000 Fiscal Year Annual Research Report
金属相酸化バナジウムの量子臨界点近傍におけるスピン・軌道揺らぎのNMRによる研究
Project/Area Number |
12740218
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
菊地 淳 東京理科大学, 理工学部, 助手 (90297614)
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Keywords | 酸化バナジウム / 核磁気共鳴 / 金属絶縁体転移 |
Research Abstract |
V原子に対しTi置換を施した酸化バナジウム(V_<1-x>Ti_x)_2O_3系においてはx=0.05近傍において反強磁性絶縁相が消失し、基底状態が反強磁性金属相へ転じることが知られている。しかしながら、絶縁相から金属相への転移が絶対零度で起こるいわゆる量子臨界点であるか否かについては詳しい研究がなく不明であった。これを明らかにする目的で、(V_<1-x>Ti_x)_2O_3のx=0.05近傍の粉末試料を合成し、磁化率測定により磁気相図を作成した。その結果、x=0.05近傍における絶縁相から金属相への転移は量子臨界的ではなく有限温度で不連続的に起き、常磁性金属相から反強磁性絶縁相への転移温度がおよそ60Kまで下降した後消失し、反強磁性金属相への転移がより低温(およそ18K)に新たに出現することが分かった。また、圧力下における磁化率測定により、金属相における反強磁性転移温度は圧力とともにおよそ5K/GPaの割合で低下することが分かった。 この他、金属相が安定化されたx=0.055の粉末試料に対し^<51>V原子核の核磁気共鳴(NMR)実験を行ったところ、局所的環境の異なる二種類のV原子サイトの信号が観測された。Ti置換により新たに出現したNMR信号はTi原子を近傍に持つV原子サイトに由来すると考えられ、以前の研究では判別できなかったものである。この結果、(V_<1-x>Ti_x)_2O_3系も従来考えられてきたような均一な系ではなく、V原子を欠損させたV_<2-y>O_3系と同様の不均一性を持つことが明らかとなった。また、NMRによる詳しい研究がほとんどなされていなかった反強磁性絶縁相においても^<51>V核のNMR実験を行った。その結果、金属相と同様Tiを近傍に持つV原子からの信号が観測され、不均一性が基底状態(絶縁体か金属か)の違いによるものではなく、絶縁相・金属相共通の性質であることが明らかになった。
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