2000 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12740275
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
中村 啓彦 鹿児島大学, 水産学部, 講師 (50284914)
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Keywords | 黒潮 / 東シナ海 / 数値シミュレーション |
Research Abstract |
九州東方海域における種子島沖冷水渦や黒潮小蛇行の発生は、沖縄舟状海盆北部の黒潮流路形態に依存している可能性が、近年の観測事実より指摘されている。特に、比較的短周期の種子島沖冷水渦の発生過程は、東シナ海の大陸棚上を北上する約50日周期で波長500km程度の擾乱が九州南西方海域の海底地形と相互作用することにより、トカラ海峡での黒潮流路が南北に移動することに起因していると指摘されている。当研究は、この一連のプロセスを引き起こす具体的な力学過程を、数値実験により解明することを目的としている。その方法として、海底地形効果の再現に優れたシグマ座標モデル(POM)を基盤にした高解像度(現在の水平格子間隔は5km)領域モデルを作成して、黒潮流路パターンの現実的な変動を再現し解析する。初年度の課題は、現実的な黒潮流路を再現する数値モデルを作成すること、初期条件や境界条件に対するモデルの感度を調べることである。海底地形はJODCの3次メッシュ水深データから、初期・境界値の密度場はNODCに収録されている水温データから、それぞれ現実的な場を作成した。流入・流出量の境界条件は、人工的にコントロールした。流入・流出量、海底地形、初期・境界密度場に関する感度実験を行なった結果、初期・境界密度場に対する感度が最も鋭敏であった。陸棚斜面上で傾圧性が強い密度場を初期・境界値とする場合は比較的南方で黒潮が陸棚斜面から剥がれ現実的であるのに対し、傾圧性が弱い密度場の場合は陸棚上を地形に沿って北上する。しかし、いずれの場合も、モデル内で傾圧不安定による擾乱が形成されなかったため、モデル内での自励的な流路の遷移は起こらなかった。これは、気侯的平均値として初期・境界値の密度場を作成したため、密度場の傾圧性が弱かったためと推測された。
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