2001 Fiscal Year Annual Research Report
太陽風起源揮発性元素同位体組成の探求-2次イオン質量分析計を用いた月試料分析
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12740305
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
橋爪 光 大阪大学, 大学院理学研究科, 助手 (90252577)
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Keywords | 二次イオン質量分析計 / 窒素 / 水素 / アルゴン / 太陽風 / 月試料 / 微小韻石 / 同位体 |
Research Abstract |
月試料に捕獲された揮発性軽元素(窒素、炭素、水素及び希ガス)同位体の研究を行った。今年度は、昨年度までの実験を踏まえ、月試料に捕獲された窒素同位体比組成の変動要因-30年来未解決だった大問題-を解決すべく、詳細なデータの解析・モデルの構築を行った。構築された新モデルでは、月表土への窒素供給源として2種類のものを仮定した:一つは多くの研究者によって広く認められている太陽風であり、もう一つは微小隕石(コスミック・ダスト)である。後者は現在の地球に降り注ぐ地球外物質の質量の大部分を占めるものであるが、1993年にその存在と地球への流入推定値が報告されるまでは、その小ささゆえにその存在が明らかにされていなかったものである。最近になり、微小分析技術の進歩により微小隕石の岩石学・鉱物学的特長や窒素同位体比組成などが次第に明らかになってきた。本研究では微小隕石の窒素同位体比推定値、及び、昨年度本研究により明らかにされた太陽風の窒素同位体比を用い、月表面でのこれらの窒素の供給割合を計算した。このようにして求まった供給割合と既知の太陽風の窒素供給量を組み合わせることにより、月への微小隕石起源窒素、牽いては微小隕石そのもののフラックス(流入量)の推定ができた。本研究により求まった月への微小隕石フラックスは地球へのフラックス推定値と誤差の範囲で一致した。このことは30年来未解決だった月試料中の窒素同位体比組成の問題に対して合理的な説明を与え得たことを意味する。本モデル・研究結果は2001年9月にScience誌で概要が説明され、詳細なモデル及びその検討は専門誌にて現在審査中である。
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Research Products
(5 results)
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[Publications] Hashizume K., Marty B.: "Nitrogen isotopic analyses at the sub-picomole level using an ultra-low blank laser extraction technique"Handbook of stable isotope analytical techniques. (印刷中). (2002)
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[Publications] Pinti D.L., Hashizume K.: "^<15>N-depleted nitrogen in Early Archean kerogens : clues on ancient marine chemosynthetic-based ecosystems?"Precambrian Research. 105. 85-88 (2001)
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[Publications] Pinti D.L., Hashizume K.: "The nitrogen and argon elemental and isotopic signature in>3.5 Ga metasediments : clues on the chemical state of the Archean ocean and hte deep biosphere"Geochimica Cosmochimica Acta. 65. 2301-2315 (2001)
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[Publications] Hashizume K. et al.: "Isotopic variability of nitrogen in lunar regolith"Science. 293. 1947b-1947c (2001)
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[Publications] Hashizume K. et al.: "Solar Wind Record on the Moon : Deciphering Presolar from Planetary Nitrogen"Science. 290. 1142-1145 (2000)