2000 Fiscal Year Annual Research Report
剛直な環状ジアルキル基を有する安定な14族二価化学種の化学
Project/Area Number |
12740336
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
岩本 武明 東北大学, 大学院・理学研究科, 助手 (70302081)
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Keywords | 環状ジアルキル基 / 14族二価化学種 / 速度論的安定化 / シリレン / プルンビレン / 光反応 / 励起状態 |
Research Abstract |
本年は独自に開発した剛直な環状ジアルキル置換基、1,1,4,4-テトラキス(トリメチルシリル)ブタン-1,4-ジイル基R_2をもつプルンビレンPbR_2(1)の合成を検討した。安定な2価鉛であるPbCl_2やPb[N(SiMe_3)_2]_2に対する1,4-ジリチオ試薬R_2Li_2(2)や1,4-ジグリニヤール試薬R_2(MgBr)_2(3)の求核置換による1の合成を試みたが、いずれも金属鉛と2の分解物が得られるのみであった。これは2や3から二価鉛に電子移動したためと考えられた。4価のジハロプルンバンR_2PbX_2(4,X=Cl,Br)の還元的脱ハロゲン化でも1は得られなかった。1の合成にはスタンニレン等で用いた合成法が適応できず、他の合成法が必要であることが分かった。 安定なジアルキルカルベンの合成に向けて、R_2のシリル基をより転位能の低いアリール基で置換した1,1,4,4-テトラアリールブタン-1,4-ジイル基R'_2(アリール=メシチルなど嵩高い芳香族基)を新規に開発した。対応する1,1-ジアリールエテンと金属リチウムの反応から1,4-ジリチオ体R'_2Li_2(5)がほぼ定量的に生成することを見出し、5とジクロロシランとの反応で、対応するシラシクロペンタンR'_2SiH_2を高収率で合成した。現在、R'_2を骨格に持つカルベン6の合成を検討中である。 来年度は1および6の合成を継続するとともに、申請者が既に単離したR_2基を有するシリレンR_2Si:(7)の反応性を明らかにする。これに関連し、7が種々の芳香族化合物と光反応し、[1+2]環化付加体シラノルカラジエン8、あるいは7-シラシクロへプタトリエン9をほぼ定量的に与えることを見出した。化合物8や9の生成は励起状態のシリレンが1,1-ビラジカルとして反応していることを示しており興味深い。これはシリレンの光反応を明確に観測した初めての例である。
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