2001 Fiscal Year Annual Research Report
鉄錯体を利用した一酸化窒素センサー及びシグナル伝達系構築に関する研究
Project/Area Number |
12740369
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Research Institution | Konan University |
Principal Investigator |
藤井 敏司 甲南大学, 理工学部, 講師 (80271518)
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Keywords | 鉄錯体 / 一酸化窒素 / センサー / シグナル伝達 / スイッチ |
Research Abstract |
本年度は昨年度の成果を受けて次のような結果を得た. 1.センサー部位の構築に関する研究:昨年度の本研究の成果において,m-xylyl基をブリッジとする2量体型ジチオカルバメート誘導体鉄錯体(Fe-DTC)を,シグナルアクセプター部位としてデザインし合成した.本年度はその一酸化窒素(NO)錯体(NO-Fe-DTC)_2を合成し,電子スピン共鳴法,FT-IR法などにより電子状態に関する知見を得た.m-xylylスペース程度の距離があると,結合したNO分子上の不対電子間の相互作用はほとんど見られないことがわかった.また,DTCの置換基を変化させたところ,電子供与性基によりDTC配位子のC-N結合間を強く,電子吸引性基により同結合を弱くできることがわかった.NOの結合による構造変化を伝えるためには,C-N結合の回転を抑えるためにも結合が強い方が好都合であるため,置換基として電子供与性基が有効であることがわかった.現在,これらの知見を基に他分子種への結合に適したリンカー部位をデザインし,合成を進めている. 2.シグナルアクセプター側の選定に関する研究:分子間の情報伝達系構築の予備段階として,1にも述べたm-xylylブリッジを有する二量体型Fe-DTC錯体を分子内情報伝達系として検討している.八面体型のFe(III)一DTC_3の一方のサイトにNOが結合し,正方錐型へと変化したとき,他方の八面体型サイトにその構造変化が伝わり,もう一方のサイトのNOとの反応性に影響を及ぼすかどうかを,(NO-FeDTC)_2の生成速度を観測することにより検討している.
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