2000 Fiscal Year Annual Research Report
新規安定ラジカルを用いた電導性磁性体へのアプローチ
Project/Area Number |
12740380
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Research Institution | Wakayama University |
Principal Investigator |
奥野 恒久 和歌山大学, システム工学部, 講師 (50251327)
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Keywords | ニトロキシド / BEDT-TTF / 電気伝導度 / 有機ラジカル / 磁性 |
Research Abstract |
伝導電子と局在電子が強い相関を有する系を新規に輩出すべく、対イオンとして安定有機ラジカルを有する電導性物質の開拓を目指して研究を行った。一般に分子性導電体は、電気分解により調製されている。従って、有機ラジカルを電導性物質の対イオンとするためには、このラジカルは以下のような条件を満足しなければならない。(1)ラジカル分子が電荷をもっており、安定な塩として単離できること(2)酸化(還元)電位が、電気分解を受ける物質よりも充分に高く、電気分解の過程で分解しにくい化合物であること。 以上の2つの条件を満たす分子として、カチオンあるいはアニオンとなりうる骨格として、カルボキシル基、フェーノール性水酸基、ピリジン環、アミノ基など、更にラジカル部位としてはニトロニルニトロキシド、イミノニトロキシド、ジチアジアゾイルラジカルを検討した。 今年度はまず電気化学的な特性を検討すべく、p-カルボキシルフェニルニトロニルニトロキシド(p-NNBA)、ならびにp-カルボキシルフェニルイミノニトロキシド(p-INBA)を合成し、サイクリックボルタメトリーで両ラジカルの酸化電位について検討した。溶媒をしてジクロロメタン、参照電極はAg/AgClを用いたところp-NNBAは半波電位が1.00Vに可逆な酸化還元波が観測された。p-INBAについては0.0V〜1.2Vの間で酸化波は観測されなかった。これら2つの化合物を電気分解の支持電解質として用いるために、(n-Bu_4)N^+OH^-と作用させ、ラジカルを四級アンモニウム塩とした。 良好な電導性物質を与えやすいBEDT-TTFと両ラジカルを支持電解質として電気分解を試みた結果、CVの結果から予想された通り、1.00Vに第一酸化電位を有するp-NNBAでは電気分解の進行とともにラジカルが分解していってしまった。それに対し、電気化学的に安定であったp-INBAでは、支持電解質の分解は起こらず黒色の板状結晶が得られた。この結晶の電気伝導度を測定したところ、室温で0.3Scm^<-1>と良好な値を与えた。この化合物の電気伝導度と磁化率の温度依存性を現在検討中である。
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