2000 Fiscal Year Annual Research Report
大洋島の植物集団における遺伝子多様度の維持機構と種分化初期過程の解明
Project/Area Number |
12740470
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
加藤 英寿 東京都立大学, 理学研究科, 助手 (50305413)
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Keywords | 小笠原諸島 / シロテツ属 / フヨウ属 / 種分化 / 遺伝的多様性 / 大洋島 |
Research Abstract |
小笠原諸島において分化したと考えられるシロテツ属(Boninia)とフヨウ属(Hibiscus)植物を対象として、大洋島における植物の種分化初期過程の解明のために下記の研究を行った。 1 現地調査:シロテツ属植物における交配実験の結果、近縁種間の強制的な交雑が可能であることがわかった。しかし現地調査において近縁種間の開花時期のずれが観察されたことから、遺伝的交流が制限されている可能性が示唆された。 2 形態観察:フヨウ属植物の葉形態の変異を定量化し、地域集団レベルで比較した結果、小笠原固有種のモンテンボクにおいて、父島と母島の集団間で顕著な差異が認められた。また、シロテツ属植物の形態解析の結果、新分類群(新種もしくは新変種)の存在が明らかとなった。 3 集団遺伝学的解析:シロテツ属集団における酵素多型分析(5酵素7遺伝子座)の結果、大洋島の植物集団として前例がないほどの高い遺伝子多様度が地域集団内に検出された。すべての遺伝子座において、対立遺伝子の多くが種間・地域集団間で広く検出されたことから、種分化の過程でボトルネックなどの遺伝子多様度を減少させるような作用が生じなかったと考えられる。同種内の局所個体群間の遺伝子交流は、島間よりも島内で高頻度に生じていることが明らかとなった。また、上記の新分類群と見なされた植物集団は、他の分類群とは遺伝的に分化していることが示唆された。 4 分子系統学的解析:フヨウ属の様々な地域集団において、葉緑体DNAの遺伝子間領域の塩基配列を決定・解析したところ、モンテンボクに極めて多くの遺伝的変異が存在し、父島・母島間で遺伝的に分化していることが明らかとなった。また分子系統学的解析の結果、小笠原諸島に分布する2種のフヨウ属植物は、それぞれ異なる祖先から分化してきた可能性が示唆された。
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Research Products
(1 results)