2001 Fiscal Year Annual Research Report
超臨界流体を利用した難溶性π共役有機化合物の微結晶の作製とその光・電子特性の評価
Project/Area Number |
12750008
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
笠井 均 東北大学, 多元物質科学研究所, 助手 (30312680)
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Keywords | キナクリドン / 超臨界流体 / 超臨界再沈法 / 微結晶 / ナノ結晶 / サイズ効果 / 顔料 / 湿式インキ |
Research Abstract |
キナクリドンまたはその誘導体は、全赤色顔料の半分近くに使われていると同時に、EL材料などにも有望なことが知られているが、それらは難溶性、難加工性という欠点を有する化合物であるため、精製や材料化が容易ではなかった。特に、サイズ制御されたキナクリドン系微結晶を作製することは、従来困難な状況であった。そこで、溶媒として超臨界流体を使用し、そこから再沈澱するという超臨界再沈法を用いることにより、ナノオーダーレベルで制御されたキナクリドン系微結晶の作成を試みた。 種々の作製条件を検討した結果、粒経500nm以下の領域でサイズ制御が可能であることが分かった。例えば、超臨界流体の温度を上昇させると、溶出濃度が向上するため、サイズが大きくなる傾向がある。その他、超臨界流体の種類、冷却溶媒の種類・温度によっても、生成される微結晶のサイズ・結晶型は制御可能であった。また、結晶型は同型にも拘わらず、サイズが微小化すると光吸収ピーク位置が、従来には観測されない程、高エネルギー側にシフトするという特徴を有することも判明した。これは、他のπ共役有機微結晶にもみられる特有のサイズ効果と同様の挙動である。さらに、200℃から270℃までという超臨界温度に達する前に、薄い黄色呈色の液体が流出することも判明した。これは、キナクリドン合成時の副生成物が流出すること、すなわちキナクリドンが精製されていることを意味している。 以上のように、精製が同時工程で可能であること、更にサイズを制御することにより、従来には無い光吸収ピークを有するキナクリドン微結晶が得られたことは、機能性材料に使用するという点において、非常に意義深い。同時に、得られた微結晶分散水は分散安定性が高く、湿式インキ・顔料としても有望である。本奨励研究の目的は十分に達成できたと考える。
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Research Products
(1 results)