2000 Fiscal Year Annual Research Report
高温高分解能電子顕微鏡法によるセラミックス電子材料の焼成過程の動的観察
Project/Area Number |
12750016
|
Research Institution | Kyoto Institute of Technology |
Principal Investigator |
一色 俊之 京都工芸繊維大学, 工芸学部, 助教授 (90193458)
|
Keywords | 焼結 / 電子顕微鏡 / 高温その場観察 / セラミックス電子材料 / 酸化チタン |
Research Abstract |
セラミックス材料の熱処理過程に起こる化合,分解,焼結等の反応挙動の知見を得ることを目的としてチタン酸バリウム合成過程の挙動を解明すべく電子顕微鏡による高温その場観察を行った. チタン酸バリウム合成の原料となる酸化チタンを加熱観察し,原料自体の熱挙動を検討した.アナターゼ型酸化チタン微粒子の昇温時変化は,大きく分けて3段階で進行することが明らかになった.最初に微小ステップの生成,晶癖の出現等の結晶表面領域の構造変化が400℃〜600℃で起こる.加熱によって表面近傍の原子拡散が起こるがこの温度領域においてその総量は少なく,結晶表面の狭い領域にのみ形状変化として現れると考えられる.続く600℃〜700℃の温度領域では,粒子間の粒界の移動による粒成長が進行する.合体する粒子間のネックを埋めるように原子が移動してブリッジが形成されるが,このブリッジへの原子移動は表面拡散および粒界拡散により行われると解釈される.電子線回折像による構造解析の結果から,アナターゼ型構造はこの温度域でルチル型構造へ相変態することが明らかとなり,この相転移が粒界移動を引き起こすものと推察される.更に明瞭な晶癖の出現および比較的大きなステップ形成もこの温度域でおこり,原子の表面拡散速度の増大による大幅な形状変化がこの段階で起こることが確認された.このことは酸化チタンを原料に用いるチタン酸バリウム合成において,この温度域が重要であることを示している.試料温度が800℃を越えると,原子拡散がより活発になり,大量の原子拡散によって粒子表面に秒単位での急速なステップの成長が見られた.このようなステップの高速の出現・成長は動的高温その場観察によってのみ観察が可能である.
|