2000 Fiscal Year Annual Research Report
軌道不安定性による多自由度ハミルトン力学系の普遍的性質に関する研究
Project/Area Number |
12750060
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
山口 義幸 京都大学, 情報学研究科, 助手 (40314257)
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Keywords | 多自由度 / ハミルトン系 / リアプノフ数 / リアプノフベクトル / リーマン幾何学 / 測地線 / ヤコビ方程式 |
Research Abstract |
力学系を解析する手法の一つとして、リアプノフ解析がある。これはカオス系の特徴である軌道の指数的不安定性を定量化したリアプノフ指数と、その不安定な方向を表すリアプノフベクトルの二つを用いて、力学系の特徴を捉えていく方法である。本研究の目的は、ハミルトン系に対してこの方法を改良・発展させ、応用することである。 力の大きさが有限なハミルトン系では、2つの方向に対して指数的不安定性が発生しないことがわかっている。軌道の進行方向とハミルトニアンの勾配方向である。従って、リアプノプベクトルが純粋に不安定な方向を差し示すためには、これら2つの方向を他の方向から分離してやらなければならない。リアプノフ指数やリアプノフベクトルを求めるためには、相空間における運動方程式を線形化しなければならないが、単に正準運動方程式を線形化すると、一般には上記の分離ができない。 そこで、配位空間に適当なリーマン計量を導入することで、運動方程式を測地線方程式として表す幾何学的な方法を用いた。この方法により得られた線形化運動方程式は、曲率などを用いて記述され、これらの性質を用いることにより次の結論を得た: (1)リアプノフベクトルの初期条件を、軌道の進行方向とハミルトニアンの勾配方向で張られる2次元空間に置くと、時間発展してもその2次元空間に留まる。 (2)リアプノフベクトルの初期条件を、上の2次元空間の直交補空間に置くと、時間発展してもその直交補空間に留まる。 すなわち、不安定性を持たない2つの方向を分離するような線形化運動方程式が得られたことになる。 さらに、3自由度のモデル系を用いて、幾何学的方法の数値実験を行ったところ、上記の理論的結論を確認することができた。さらに、リアプノフ指数については従来の方法と幾何学的方法が同一の値を与えることが分かった。
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