Research Abstract |
近年の機械技術の発展と共に,機械要素は非常に小型化・高精度化し,相対運動する2面間距離も急速に小さくなっている.例えば磁気記憶装置では,その記録密度向上のため,ヘッド・媒体インターフェース(HDI)技術が急速な発展を遂げ,現在では空気膜を介して数十nmの浮上量が実現されている.このような従来の空気膜浮上方式による高記録密度化と共に,さらなる高記録密度化を目指してニアコンタクト方式,コンタクト方式といった次世代の新しいHDI方式も,その実現に向けて精力的に研究が進められている.これらの新しいHDI方式では,ヘッド・媒体間に形成されるメニスカスが,ヘッドの動的挙動に大きく影響することが知られている.そこで,本研究の目的は,固・液接触部に形成されるメニスカスによる吸引力の動的特性を実験的に把握することである. 本年度は,まず,動的メニスカスカを測定できる実験装置を開発した.この実験装置において,平面ガラス基板と球面ガラスレンズの間に実験液体のメニスカスが形成される.平面ガラス基板は微動用ピエゾステージ上にあり,ピエゾステージによって上下に振動を加えることができる.一方の球面ガラスレンズは平行板ばねに取り付けられている.平面ガラス基板の振動がメニスカスを介してガラスレンズに伝わり,平行板ばねの変位を変位計で測定する.ピエゾステージの入力と変位計の出力との比較によって,メニスカスの振動応答を求めることができる. 次に,本装置を用いて,メニスカスを介した振動伝達実験を行った.この際のパラメータとして,固体表面間平均距離,入力振動振幅,入力振動周波数を変化させ,応答の変化を観察した.その結果,(i)2面間距離によって振幅比が変化する,(ii)2面間距離によって振幅比のピーク値における周波数が変化する,(iii)メニスカスのばね定数,減衰係数は周波数依存性を持つ,(iv)これらメニスカスの動特性は,メニスカスをばねとダンパをもつVoigtモデルで近似できると仮定した場合の解析結果で説明できることなどがわかった. 以上のように,平成12年度の研究実施計画である,(a)実験装置の設計・製作,(b)メニスカスの動特性に関する実験手法および評価手法の確立,(c)マクロメニスカスの動特性データ収集と解析,について研究を遂行し,メニスカスのダイナミクスに関する基本特性を得ることができた.
|