2000 Fiscal Year Annual Research Report
プラズマ流におけるイオンおよびラジカル生成に関する量子力学的研究
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12750123
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
川野 聡恭 東北大学, 大学院・工学研究科, 助教授 (00250837)
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Keywords | プラズマ / ラジカル / 電子散乱 / 量子力学 / 数値シミュレーション / (e,2e)機構 / 原子物理 / 衝突断面積 |
Research Abstract |
ヘリウム原子(e,2e)プロセスの量子力学的解明を行う前段階として,電子の一つ少ない水素原子(e,2e)プロセスの理論と実験の精密な比較検討を行った.ここで開発した理論モデルおよび数値解析手法の概要は次のとおりである.入射電子および射出電子は反対称性(フェルミ粒子としての取り扱い),Identical(付加弁別性)およびスピンを考慮した.衝突前の原子は,基底状態だけでなく種々の内部状態(量子数)を考慮し,衝突後は励起(ラジカル化),イオン化を考える.基礎方程式は2階の微分方程式に積分項(交換項)を含んだ形となるが,従来この交換項に対する種々の近似方法が考えられてきた.しかし,研究代表者は,数値流体工学で培ったノウハウをいかし,近似を行わない数値解法を開発した.これによって,入射電子のより低エネルギー領域での解析精度が格段に向上し,実際のプロセスプラズマにおける電子エネルギー領域を正確にカバーすることができた.また,基礎方程式は線形であるが,衝突断面積の計算には波動関数を少なくとも7桁精度で求めておかなければならない.さらに,クーロンポテンシャルは無限遠方までその影響が及ぶ(カットオフのテクニックも使用可能であるが,将来,光子による励起イオン化を考えたいので,このテクニックは使わない)ので,クーロンフェイズシフト(位相のずれ)をも計算しなければならない.これらを考慮した高精度数値解析手法の開発にも成功し,三重微分断面積を定量的に予測することが初めて可能となった.英国ケンブリッジ大学が管理している実験データと比較検討を行った結果,従来の理論解析結果よりも実験事実をよりよく再現できることがわかった.これらの成果はまもなく専門誌に掲載予定であり,さらに,2001年12月英国で開催予定の「電子散乱に関する国際会議」において,研究代表者は招待講演を依頼されている.
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Research Products
(2 results)
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[Publications] 川野聡恭: "水素原子(e,2e)機構の量子力学的数値解法"「次世代超音速旅客機成立のための空力基盤研究」シンポジウム発表論文集. 43-46 (2001)
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[Publications] P.J.P.Roche 他: "Exact versus local exchange in distorted wave Born Calculations of Electron Impact Ionisation"Many-Particle Spectroscopy of Atoms, Molecules and Surface. (予定). (2001)