2000 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12750169
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Research Institution | Toyama Prefectural University |
Principal Investigator |
百生 登 富山県立大学, 工学部, 助手 (80239590)
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Keywords | 浮遊細胞 / 凍結保存 / 最適操作条件 / 凍害保護物質 / 2段冷却法 |
Research Abstract |
12年度は浮遊細胞の最適凍結条件を決定するためシミュレーションを行った。 遅い冷却速度の場合,浸透圧差による細胞からの水分の流出のための時間的余裕が多くなり,細胞は脱水収縮し細胞は障害を受ける.しかし,細胞内の溶液がその分濃縮されるため細胞内での核生成は抑制される.他方,早い冷却速度の場合は細胞の脱水量が少ないため細胞内での氷晶核の生成がおこり易くなり細胞は凍結による障害を受ける.従って,適度に脱水し、細胞内凍結が起こらない冷却速度が至適冷却速度となる.シミュレーションにより、至適冷却速度はほぼKg/d(Kg:水の細胞膜透過係数、d:細胞直径)に比例することがわかった。細胞内での核生成を抑制するためには細胞はある程度脱水・濃縮されなければならないが,Kg/dが小さいほど細胞は脱水し難く,時間的な余裕が必要となるためである。 凍害保護物質であるglycerolの脱水の抑制効果によりglycerol濃度が高いほど至適冷却速度は遅くなる.ただし,glycerol 30%の場合にはglycerolの核生成の抑制効果が顕著となり,至適冷却速度はglycerol 20%に比べてやや速くなる.これは,核生成を起こしやすい大きな細胞ほど顕著である。 glycerol 0%の場合,大きな細胞では至適冷却速度が現れなかった.これは,細胞内での核生成確率が大きく,細胞内で凍結しない最も遅い冷却速度では細胞の脱水が多くなりすぎ,溶液効果により細胞は死滅するからである.また逆に,Kg/dが大きな場合で至適冷却速度が現れない結果が得られた.これは,細胞内での核生成確率が小さく生残率が冷却速度に対して極値を持たず冷却速度とともに単調に増加するためである. 以上より,細胞の種類(膜透過係数、寸法)によって至適冷却速度が異なること,凍害保護物質により生存率は上昇するが,至適冷却速度はその濃度によって異なることがシミュレーションにより明らかとなった.また,2段冷却法の考え方を細胞レベルのミクロ挙動を考慮しながら実現できる.
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