2000 Fiscal Year Annual Research Report
脳スライス組織・コンピュータ相互結合系のダイナミクス
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12750394
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
片山 統裕 東北大学, 大学院・情報科学研究科, 助手 (20282030)
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Keywords | 海馬神経回路 / 自発バースト活動 / 相互引き込み / 強制引き込み / シナプス長期増強現象(LTP) / モジュール間相互作用 / 同期 / 脳波 |
Research Abstract |
動物の脳内では、多数の機能モジュールが協調してはたらくことにより、高度な情報処理機能が実現されている。本研究では、ラット海馬スライス標本を高カリウム脳脊髄液中で維持することにより、CA3領域神経回路のリズム的脳波様のバースト発火活動を誘導し、これをコンピュータ上に構築した非線型振動子モデル(放射状アイソクローン振動子,RIC)と相互結合させた。これを用い、モジュール間相互作用の一例である、リズム活動の引き込み現象を調べた。 RIC→海馬CA3の単方向結合において、刺激周期・強度に応じて、さまざまな引き込みパターンが観察された。また、強制引き込みが生じない程度に刺激強度を弱めると、自発的バースト活動の周期のゆらぎが大きくなる傾向が見られた。海馬CA3とRICを相互結合すると、RICへの結合強度を適当に調整することにより、海馬バースト活動が安定化された。このとき、海馬CA3とRICの相互引き込みが生じていた。 海馬CA3神経回路を単純な非線型振動子とみたてて位相反応特性をモデル化し、RICと相互結合したときのダイナミクスを理論的に解析した。結合強度をパラメータとする大域分岐構造を調べた結果、接線分岐を繰り返すことにより、多彩な引き込みパターンが生じうることが明らかになった。 また、単一ニューロン活動を計測し、集団バースト電位と個々のニューロンの活動との関連について検討した。電気刺激で集団バースト電位を誘導した場合には、バーストに先立ち、散発的な単一ニューロン活動が観測された。また、テタヌス刺激を与えシナプス長期増強現象を誘導すると、刺激-発火時間の短縮がみられた。しかし、多数のニューロン活動を分離することが困難であった。今後は計測方法を改良し、より詳細な単一ニューロン活動の解析を行う必要がある。
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Research Products
(4 results)
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[Publications] Katayama,N. et al.: "Dynamics of a hybrid system of a brain neural network and an artificial nonlinear oscillator"Biosystems. 58. 249-257 (2000)
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[Publications] Katayama,N. et al.: "Nonlinear dynamics of a hybrid consisting of a thin hippocampal slice and an artificial oscillator"Neurosci.Res.(suppl). 24. P-615 (2000)
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[Publications] 小沢雅人 他: "海馬歯状回細胞におけるシナプス入力惹起カルシウム濃度増加の長期増強現象"信学技報. MBE2000・94. 69-75 (2000)
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[Publications] 坂本和久 他: "ノイズで駆動されるスパイキング・ニューロン回路網モデルのダイナミクス"信学技報. MBE2000・91. 45-52 (2000)