2000 Fiscal Year Annual Research Report
土構造物補強工法の塑性論的考察とその設計法への応用に関する研究
Project/Area Number |
12750449
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
小林 俊一 京都大学, 工学研究科, 助手 (10243065)
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Keywords | 土構造物 / 補強工法 / 塑性論 / 極限解析 / 設計法 |
Research Abstract |
現行の補強工の設計の多くは、最終的には力の釣合だけを念頭に置いた慣用的な極限平衡法に基づく設計法に帰着することが多い。そのため地盤材料と補強材の相互作用による補強効果を、系の変形メカニズムから積極的に評価して、設計計算に直接反映させる手法はあまり見受けられない。そこで、地盤補強工法の効果を定量的に評価して設計計算に取り込む方法として、系の変形メカニズムに着目した極限解析の応用を着想するに至った。 典型的な例題として、自立式矢板とタイロッドよりなる擁壁の安定問題を取り上げ、上界法による安定解析を行った。その際に、剛塑性有限要素法などの空間離散化手法を用いて数値計算に持込む方法は採らず、多少精度は落ちても力学的なエッセンスを失わない範囲内でできるだけ簡単な計算によって崩壊荷重を評価するように留意した。 具体的な上界計算として、簡単な直線滑り場を想定すると、安全率が1となる極限矢板高さの上界値は3次方程式の解として陰形式で表せる。また、タイロッドの強度によって極限矢板高さや崩壊モードが変化することを端的に表現できることが明らかとなった。 従来の極限平衡法による解法では、タイロッドの効果を表現するために、タイロッドの引張力を考慮して、釣合式を解く方法であった。しかしながら、タイロッドに実際に発生する引張力は、崩壊モードによって変化するのが普通であり、この効果を極限平衡法に取り込むためには、タイロッド引張力に不等式の制約条件を導入した最適化問題としての定式化が必要であろう。ただ、そのような面倒な定式化をしたとしても、あくまでも近似解法にすぎず、塑性論的な意味での合理性は無い。一方、本研究で用いた上界法による解析法は、塑性論的な意味づけもスマートで単純な定式化にも関わらず、崩壊モードによる効果を端的に取り込めていると考えられる。
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