Research Abstract |
本研究で得られた成果をまとめると,以下の通りである. 1)平成11,12年度の現地調査結果を踏まえて,特に水位,流速及び塩分に着目し,水理・水質学的変動に関する数値計算を実施した.今回,北川感潮域に適用した流動モデルは,密度の非一様性や流れの3次元性を考慮した解析法を用いた.基礎式は,質量保存式・運動量保存式および塩分偏差に関する保存式からなり,成層化された条件下での渦動粘性係数や拡散係数に関しては,もっとも一般的な勾配型リチャードソン数を用いた関数型モデルを適用した.差分近似を得る方法として,有限体積法を用いた.計算は,平成9年度に調査した北川感潮区間(0-7km)での現地調査データをもとに実施した.モデル上,3次元での計算も可能ではあるがここでは鉛直2次元解析とし,横断方向は一様と考えている.座標系は直交座標系で,水深を鉛直方向に6層に分割した.差分格子は,Δx=1m(単位幅),Δy=100m,Δz=1.0m,時間ステップΔt=5secである.計算結果から,流れ場に対応した塩分等値線図が得られ,大潮・憩流期には流速の方向が乱れ,それに呼応するように塩分分布もやや歪んで形成された.その後,下げ潮へ移行することで,明瞭な塩水くさびの形成状況が再現され,その先端部は現地調査の結果と同様に,上流5〜7kmに及んでいる.このように塩水くさびの流動状況に関しては,現地データとの整合性も見られ,ほぼ満足いく結果となった.また,この結果から昨年度までに得られた生息域の評価を行う際の有用なツールとして利用可能である. 2)カワスナガニの生息選好性を規定する環境因子のうち,河床材料について前年度からの追加実験を実施した.その結果,カワスナガニの挙動の傾向を概略すれば,(1)中礫以下の材料よりも中礫以上の材料を好み,(2)実験開始直後の水位下降時に顕著な動きは見られるが,その後の活動範囲は平均水位以深であった.
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