2000 Fiscal Year Annual Research Report
都市公共交通に対する複数の需要喚起策の適切な組み合わせとその効果計測
Project/Area Number |
12750469
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
北詰 恵一 東北大学, 東北アジア研究センター, 助手 (50282033)
|
Keywords | 都市交通 / 世代会計 / 需要喚起 / 事業評価 |
Research Abstract |
地方中枢都市における地下鉄や新交通システムなどの都市公共交通機関の需要喚起策は,大きな効果をあげているとは言えない.その大きな要因の1つとして,各政策が独立に,かつ,できるところから行われている場合が多いため,全体の整合性がとれていないという点があげられる.施策実行には,適切な組み合わせと順序が必要である.それらが行われないことによって失われた便益が明確でないために,全体の整合性が保たれない政策実行が放置されていると考えられる.このような背景から,複数の施策に対する適切な組み合わせと順序を明確に評価でき,その効果を計測して明示できる手法の開発を,本研究の目的とした. 本研究では,まず,都市公共交通の需要喚起策の総合性と不可逆性の整理を行った.一旦,自動車を保有,利用した主体が公共交通に転換しにくい点や,郊外の戸建て住宅に居住し始めた主体が集約的な需要を必要とする大量公共交通になじまず自動車利用に依存していく点をとりまとめた. その上で,これまで,研究者が開発してきた世代会計モデルをベースに,各世代別に当該事業によって享受できる便益と負担している費用の差である純便益を集計して,市民全体の便益を計算できる考え方を整理した.この都市交通基盤型世代会計モデルは,その評価段階での完全予見性を仮定しているものの,将来の毎年の損益計算書と貸借対照表を作成することから,逐年的な評価を可能にする.また,世代会計モデルから作られる世代勘定表は,単なる財務分析部分だけでなく,経済分析として得られる便益をも導入できるので,準動学的な便益計測結果を明示的に表現できるものとなっている.今後は,土地利用・交通変化を簡便な形で取り入れたモデルを組み合わせ,具体的な政策の組み合わせや順序の違いによって,世代勘定表によって集計できる純便益総和が異なることを示すような枠組みを構築していく必要がある.
|