2000 Fiscal Year Annual Research Report
近隣商業施設を対象とした震災復興プロセスの把握による商業構造の転換に関する分析
Project/Area Number |
12750488
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Research Institution | Hiroshima National College of Maritime Technology |
Principal Investigator |
田中 康仁 広島商船高等専門学校, 流通情報工学科, 助手 (50321485)
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Keywords | 近隣商業施設 / 阪神淡路大震災 / 復興過程 / 商業構造 / 市場・商店街 |
Research Abstract |
1.店舗数の集計による量的復興と構造転換の把握 店舗数の集計に関しては、震災前から立地している店舗を従来店舗、震災後新たに立地した店舗を新規店舗として、件数の推移を震災発生から1年ごとに集計した。それによると、復興過程における新規店舗の役割は大きく、その傾向は年を追うごとに増している。一方で、従来店舗の再建は震災1年後に約5割程度であったが、それ以降は停滞および衰退という過程をとっている。また、新規店舗の中でも特に出店比率が最も高いコンビニエンスストアに焦点を当てて分析を行った。具体的には、コンビニの商圏をVORONOI線図により描画し、震災前と後を比較した。これによると、震災後は震災前に比べて商圏が密になっており、対象地域におけるコンビニエンスストアの出店が多い状況が見て取れ、最寄り品を中心とした従来店舗の競合が激化していることが分かった。 2.経営者へのヒアリング調査による復興に対する印象(質的復興)と新規店影響の把握 (1)商店街・市場の現状は、景気の動向も相まって大変苦しい状況におかれており、後継者がいる店舗はまだ良いが、後継者がいない店舗の先行きは暗い。(2)経営者から見た復興の進展状況に対する印象は、消費者の意識や年齢構成が変化していると感じており、対話型の販売を嫌う傾向が強い若者を中心とした若年化が進んでいくと、市場経営者は苦境に立たされると感じていた。(3)新規大型店の影響については、顧客を吸引されており、従来、市場の役割の一つであったコミュニティーゾーンの役割も大型店に機能を奪われている。また、近くの商店が大型店に影響を受けて経営悪化、その為、卸売業としての経営も苦境に立たされるといった間接的弊害もある。 3.成果の要約 調査開始当初、年月の経過とともに商店数は震災前の水準(震災前と同じ店舗数)になるまで増加し、その中心は震災前の店舗経営者であると考えていた。しかしながら、現実は商店街・市場の解散に代表されるように、既に廃業してしまった店舗も少なくなく、一方で新規店舗の立地が目立つようになってきた。こうしたことより、今後は完全な復興を分析するよりもむしろ、復興ラインを見極め、その中での新旧の交代による商業構造の転換を把握することが重要であると思われる。
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