2000 Fiscal Year Annual Research Report
下水汚泥焼却灰からの重金属類のクローズド型バイオリーチングシステムの開発
Project/Area Number |
12750490
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Research Institution | Iwate University |
Principal Investigator |
伊藤 歩 岩手大学, 工学部, 助手 (90312511)
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Keywords | 下水汚泥焼却灰 / 重金属 / バイオリーチング / 硫黄酸化細菌 |
Research Abstract |
本研究では、下水処理場から生じる汚泥焼却灰の安全性を高め、再資源化を促進するために、焼却灰に含まれる重金属類の除去・回収システムの開発を目的とした。焼却灰中の重金属類はpHの低下により溶出し、除去できることが分かっているが、その際には多量の酸が消費される。一方、硫黄酸化細菌は、窒素やリン等の栄養塩類と元素硫黄が存在する好気的な環境において硫酸を生じ、その生息環境のpHを1程度まで低下させる独立栄養細菌であり、焼却灰の酸性化に利用できると考えられる。また、この細菌は下水汚泥中に生息することが報告されている。そこで、栄養塩類を含む下水二次処理水、並びに汚泥消化ガスの脱硫廃棄物を用いた硫黄酸化細菌による焼却灰の生物学的酸性化とそれに伴う重金属類のリーチングについて実験的に検討した。 (1)下水汚泥焼却灰の生物学的酸性化に及ぼす溶媒の影響 硫黄酸化細菌の栄養塩源としての下水二次処理水の利用可能性を明らかにするために、元素硫黄を基質とし、蒸留水、合成培地及び下水処理水のそれぞれを溶媒とし、下水汚泥から分離した硫黄酸化細菌を用いた焼却灰の生物学的酸性化を回分実験により検討した。その結果、下水処理水は硫黄酸化細菌の栄養塩源として利用でき、元素硫黄濃度が10g/l、焼却灰の濃度が20g/lの場合、下水汚泥から分離した硫黄酸化細菌の利用により焼却灰のpHを6前後から1以下に低下できることが分かった。 (2)脱硫廃棄物を利用した下水汚泥焼却灰からの重金属のバイオリーチング 汚泥消化ガスの脱硫後に生じる残留物は廃棄処分されているが、この廃棄物は元素硫黄を含むことから、硫黄酸化細菌の基質として利用できると考えられる。現在、我が国では、消化ガスの脱硫方法として乾式と湿式が採用されており、入手した脱硫廃棄物の硫黄含有率は固形物換算で乾式が19%、湿式が95%であった。そこで、硫黄酸化細菌の基質として脱硫廃棄物の利用可能性を明らかにするために、乾式と湿式の脱硫廃棄物と下水二次処理水を用いて、硫黄酸化細菌による焼却灰の酸性化とそれに伴う重金属類のリーチングを回分実験により検討した。その結果、乾式及び湿式の脱硫廃棄物は、硫黄酸化細菌の基質として利用できることが分かった。特に、湿式の脱硫廃棄物を用いた場合では、焼却灰濃度が20g/l、廃棄物濃度が10g/lの時、硫黄酸化細菌の利用により焼却灰のpHが1.5まで低下し、市販の硫酸を用いた場合と同程度の重金属溶出率が得られた。 以上の結果より、下水処理場から入手可能な硫黄酸化細菌、下水二次処理水及び脱硫廃棄物を組み合わせて利用することにより、下水汚泥焼却灰から重金属類を効率的かつ経済的に除去できる可能性が示された。
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Research Products
(1 results)
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[Publications] 伊藤歩,山田浩司,武田祐介,北田久美子,相澤治郎,海田輝之: "下水汚泥焼却灰に含まれる重金属類の溶出に関する研究"下水道協会誌論文集. 37・458. 166-180 (2000)