2000 Fiscal Year Annual Research Report
電子ビームを用いた新しいフラーレン固体の創製と物性評価
Project/Area Number |
12750610
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
原 寿樹 理化学研究所, レーザー反応工学研究室, 基礎科学特別研究員 (50312252)
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Keywords | C_<60> / 電子ビーム / フラーレン / 電界電子放出特性 / 融合反応 / 密度汎関数法 / 三重項励起状態 / 赤外吸収スペクトル |
Research Abstract |
これまでの研究で、C_<60>薄膜に電子ビーム(加速電圧3 kV)を照射することにより、C_<60>二分子に融合反応が起きることが分かった。本研究は、この電子照射C_<60>薄膜の持つ電子的特性を明らかにすることを目的としている。今年度は、その一つとして電界放出特性を調べた。試料表面に電場をかけ、そこから放出される電流を測定したところ、水素ガス雰囲気下で電子照射した試料の電界放出の開始が、照射前に比べより低電場で起きることが分かった。同じ条件で照射した試料を赤外吸収分光で観察したところ、融合反応とともにC-H結合が形成されていることを確認した。電界放出特性の向上は、電子放出が起きやすいsp^3炭素がC-H結合によって薄膜表面に提供されたためと考えられる。 我々は、C_<60>薄膜への電子ビーム照射により起きる融合反応が、[2+2]成環二量化反応から始まる多段階の一般化Stone-Wales転移により進行すると考えている。反応の出発点となる[2+2]成環二量化反応は、三重項励起状態(T_1)にあるC_<60>と基底状態(S_0)にあるC_<60>との間で起こるため、この反応のメカニズムを理解するためには、これらの電子状態の幾何構造とポテンシャルを知ることが重要となる。赤外吸収分光はこのための有用な手段であり、S_0についてはすでによく調べられているが、T_1については現在のところ測定も計算も行われていない。そこで密度汎関数法を用いてT_1の振動計算を行った。その結果、S_0からT_1へのJahn-Teller歪みは小さいにも関わらず、両者の赤外吸収スペクトルはかなり異なることが分かった。また、S_0とT_1のポテンシャルの基準座標空間における相対的位置関係を調べたところ、いくつかの基準座標において大きなDushinsky回転が起きていることが分かった。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] Jun Onoe,Toshiki Hara and Kazuo Takeuchi: "Kinetic study of an electron-beam irradiated C_<60> film using in situ infrared spectroscopy"Synthetic Metals,. (in press).
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[Publications] Toshiki Hara,Jun Onoe and Kazuo Takeuchi: "Normal vibrational analysis of the triplet excited state of C_<60>"Phys.Rev.B,. (in press).