2001 Fiscal Year Annual Research Report
構造制御されたポリフェニルイソシアニド誘導体の合成およびらせん誘起とその記憶
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12750777
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
前田 勝浩 名古屋大学, 大学院・工学研究科, 助手 (90303669)
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Keywords | らせん / 高分子 / 光学活性 / 誘起円二色性 / ポリイソシアニド / キラリティー / アミノ酸 / コンホメーション |
Research Abstract |
側鎖に嵩高い置換基を有するポリイソシアニドは溶液中でも安定な4_1らせん構造をとることが知られているが、側鎖の置換基の嵩高さの小さいポリフェニルイソシアニド誘導体が同様に安定ならせん構造をとりうるかについては明らかになっていなかった。しかし、光学不活性なポリ((4-カルボキシフェニル)イソシアニド)(poly-1)が、光学活性アミン存在下、溶液中で一方向巻きのらせん構造の形成に基づくと思われる誘起円二色性(CD)を主鎖の吸収領域に示すことから、側鎖の嵩高さの小さいポリフェニルイソシアニド誘導体のらせん構造が安定なものではなく、動的ならせん、もしくは誘起らせんのどちらかである可能性が強いことを昨年度明らかにした。また、そのCD強度が時間の経過とともにゆっくりと増大することも見い出した。今年度は、poly-1へのらせん誘起の動的挙動について、CDやNMR測定および分子動力学(MD)計算による構造解析から詳細な検討を行った。Poly-1のジメチルスルホキシド(DMSO)中での^1HNMRを測定したところ、フェニル領域のピーク形状が時間とともに大きく変化することを見い出した。これは、poly-1のコンホメーションが、光学活性アミンが存在しなくてもDMSO中で大きく変化する可能性が強いことを示唆している。また、poly-1を溶解直後に光学活性アミンを加えた場合に比べて、poly-1のDMSO溶液を一定時間放置後に光学活性アミンを加えることによってCD強度は著しく大きくなることも分かった。この場合にもCD強度は時間の経過とともにさらに大きくなった。したがって、poly-1は溶液中及びアミン存在下、少なくとも2段階のコンホメーション変化を起こしている可能性が強いことが明らかになった。さらに、4_1らせん構造のポリフェニルイソシアニドを構築しMD計算を行ったところ、all-s-トランスのコンホメーションがより安定なコンホメーションである可能性が示唆された。以上の結果から、重合中に形成された4_1らせん構造は溶液中では安定ではなく、熱力学的により安定なall-s-トランスコンホメーションヘと変化し、光学活性アミン存在下、その主鎖のC-C結合が一方向にねじれることによって一方向巻きのらせん構造へと変化している可能性が強いことが明らかになった。
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Research Products
(1 results)