2001 Fiscal Year Annual Research Report
食品の品質制御を目的とした食品多成分系のガラス-ラバー転移挙動の解析
Project/Area Number |
12760086
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Research Institution | 東京水産大学 |
Principal Investigator |
萩原 知明 東京水産大学, 水産学部, 助手 (20293095)
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Keywords | ガラス転移 / 食品 / 示差走査熱量分析 / DSC |
Research Abstract |
1.高分子-低分子混合系に関して、高分子の一例として、ゼラチンを用いた実験を行なった。ゼラチンの溶液を乾燥させて得られた試料のDSC測定によるガラス転移挙動の解析に加えて、X線回折による試料中の結晶構造(ヘリックス構造)の解析を実施した。その結果、結晶構造の量が多いほど、ガラス転移温度は高く、ガラス転移に伴う熱容量変化は小さい傾向があることが分かった。金属塩、糖などをゼラチンに添加した場合、これらの添加物がゼラチンと相互作用し、ゼラチンの結晶構造形成に影響を及ぼすことが推察された。実際に金属塩として、ナトリウム塩(塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム)を用いて調製したゼラチン試料の熱分析を行なったところ、これらの金属塩はゼラチン分子と比較して、低分子であるにもかかわらず、可塑剤としての顕著な作用は示さなかったことから、ゼラチン分子とこれらの金属塩由来のイオンの特異的な相互作用が示唆された。 2.高分子-高分子混合系の例として、ローカストビーンガムとキサンタンガムの混合系に注目した。ローカストビーンガム、キサンタンガムはそれぞれ単独ではゲル化を示さないが、両者を混合することにより、分子間架橋が形成され、相乗ゲル化作用を示す。この相乗ゲル化した混合試料とローカストビーンガム単独試料それぞれのガラス転移温度を試料の水分含量をさまざまに変えて測定を行なった。低水分含量ではガラス転移温度に差は見られなかったものの、水分含量増大によるガラス転移温度の低下は緩やかであった。このことから、キサンタンガム添加で生じた分子間架橋は、水の可塑剤としての働きを、見かけ上弱める作用があることがわかった。
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[Publications] Yoshie Kato, Tomoaki Hagiwara, Toru Suzuki, Rikuo Takai: "The effect of thermal history on the glass transition of dried gelatin gel"Transactions of the Materials Research Society of Japan. 26(2). 659-662 (2001)