2000 Fiscal Year Annual Research Report
小腸上皮細胞および肝細胞におけるリポタンパク質形成・分泌制御に関する研究
Project/Area Number |
12760096
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Research Institution | Teikyo University |
Principal Investigator |
東 祐輔 帝京大学, 薬学部, 助手 (60286979)
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Keywords | apolipoproteinB / low-density lipoprotein / lipid / endoplasmic reticulum |
Research Abstract |
肝細胞や小腸上皮細胞からのapolipoproteinB(apoB)含有リポタンパク質顆粒形成・分泌機構を明らかにする目的で研究を行った。まずapoB分泌を抑制する薬剤を見出し、その薬剤の作用点を明らかにすることにより、リポタンパク質形成の新規機能因子を同定するというstrategyで研究を展開した。ヒト肝癌由来HuH-7細胞を用いて検討した結果、verapamilがapoB分泌を抑制することを見出した(40μMで作用させた場合に50%抑制)。その抑制機構を検討したところ、apoBの新規合成量には影響せず、apoBの翻訳後に作用して分泌量を減少させたものと考えられた。そこでapoBの翻訳〜分泌過程を追跡してみると、合成されたapoBが細胞内で分解される割合が増加していた。ApoBは分泌タンパク質であるが、単体では分泌されない。脂質と複合体を形成したもののみが分泌され、形成しなかったものは細胞内で分解されてしまう。つまり、apoBの分泌量は脂質との複合体形成に応じた分解量によって増減するのだが、verapamilを作用させた場合にも、apoB-脂質複合体の形成が抑制されたため分泌量が低下したと予想した。実際、verapamil存在下では分泌されるapoB含有リポタンパク質の比重が増加し、また分泌脂質の組成を調べるとコレステリルエステル(CE)、トリグリセリド(TG)の存在比が低下した。さらに、verapamil存在下、細胞を^<14>C-acetateで一定時間標識し、小胞体内腔から回収される脂質の放射活性を測定したところ、細胞全体の脂質合成速度は低下しないにも関わらず、コレステロール、CE、TGが減少した。このことからverapamilはapoB-脂質複合体形成の場である小胞体内腔への脂質供給を阻害している可能性が示された。そのような脂質輸送機構の存在は現在まで知られておらず、リポタンパク質形成に関わる新たな機構の存在を強く示唆することができた。
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