2000 Fiscal Year Annual Research Report
食餌摂取に応答する組織蛋白質合成の翻訳伸長調節機構の解析
Project/Area Number |
12760098
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Research Institution | Utsunomiya University |
Principal Investigator |
吉澤 史昭 宇都宮大学, 農学部, 助教授 (10269243)
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Keywords | protein synthesis / EF-2 / S6K1 / starvation / mouse |
Research Abstract |
動物を絶食にすると体蛋白質合成速度が減少することが知られている。絶食による蛋白質合成速度の変動に翻訳伸長因子2(EF-2)の量が関係しているかを、比較的分化の進んだ末梢組織である骨格筋と比較的未分化で消化管に近く摂取栄養素の影響を受けやすいと考えられる肝臓で調べた。ICR系雄マウス6週齢を、カゼインを25%含む完全精製飼料を自由摂取させた群(対照)、2日間絶食させた群の2群に分け、肝臓、骨格筋の蛋白質合成速度、EF-2量、EF-2mRNA量、EF-2mRNAの翻訳調節に関係している70-kDaのリボソームタンパク質S6キナーゼ(S6K1)の活性を測定した。その結果、2日間の絶食により肝臓の蛋白質合成速度は変化しなかったが、EF-2量は減少した。骨格筋では絶食により蛋白質合成速度が減少し、EF-2量も減少した。この結果から、EF-2は肝臓の蛋白質合成の制限因子ではないが、絶食による骨格筋の蛋白質合成速度の減少にはEF-2量の減少が関与していることが示唆された。また、EF-2mRNA量を測定した結果、肝臓では絶食によりEF-2量は減少したがEF-2mRNA量は変化しなかった。一方、骨格筋では絶食でEF-2量が減少したにも関わらず、mRNA量は逆に増加した。このEF-2量の変化とmRNA量の変化の不一致は、どちらの組織においても絶食によりS6K1の活性が減少し、EF-2mRNAの翻訳効率が減少したことが一因であると考えられる。このように絶食時のEF-2遺伝子発現調節は、組織により異なっていることが示唆された。
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