Research Abstract |
近年,我が国の森林を取り巻く経済的環境は,国産材価格の低迷や人件費の高騰などにより,ますます悪化している.一方,国民の環境問題への関心の高まりから,森林の公益的機能に対する要望が非常に強くなっている.これらに対応し,公益機能重視の森林管理を行いながら,森林経営を経済的に成立させるためには,従来の植栽時の管理単位である「小班」を基にした森林資源管理ではなく,より森林構造の多様性,多機能性に対応した森林管理手法の開発が必要である.本研究では,各種の木材生産性の指標を重ね合わせることによって生成される小区分を「生産サイト」と定義し,これを単位にした森林細分型人工林資源管理の構築を試みた. 平成12年度は,森林におけるGPSの受信可能性についての検討と測位データのGISへの入力方法についての検討を行った.まず,様々な林分環境下においてGPS受信試験を行い,個々の衛星のGPS信号が植生によって劣化する状況について評価を行った.また,樹冠下において干渉測位法による1〜240分の静止測量を行い,全天写真から評価した測位地点の開空度と観測時間から,アンビギュイティが解決され精度の高いFix解が得られる確率,および測位精度を求めるモデルを構築した.また同時に,森林における二周波受信機の有用性を明らかにした. 平成13年度は,森林におけるディファレンシャル補正の評価を行い,またGISを搭載したPDAを用いた受信データのGISへの入力手法の構築を試みた.さらに,生産サイトの評価基準の一つとして野生動物の行動域を考慮する必要があると考えられたため,GPSを用いた野生動物の行動域調査データから,各サイトにおける利用度を算出する方法について検討した.GPSによって取得された行動域調査データは,尾根上や粗植生域に偏る傾向がある.そこで針葉樹林,広葉樹林に設定したGPS測位点においてGPS衛星の捕捉の可否に関するデータを取得し,衛星の捕捉確率が,衛星仰角と林分要素を独立変数,捕捉の可否を従属変数とするロジスティック回帰分析によって評価できることを示した.野生動物の各サイトにおける利用度は,推定された個々の衛星の捕捉確率から導かれる「捕捉衛星数が4以上となる確率」の逆数を,実際に取得された行動域データのウェイトとして用いることにより,推定することが可能であると考えられた.
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