2001 Fiscal Year Annual Research Report
土壌水の不攪乱採取手法の開発による林地不飽和土壌中の溶存物質移動現象の解明
Project/Area Number |
12760105
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
小杉 賢一朗 京都大学, 農学研究科, 助手 (30263130)
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Keywords | 鉛直浸透 / 土壌水 / 採水手法 / 水質 / 地下水汚染 / 物質循環 / ラインメータ / 透水係数 |
Research Abstract |
雨水や潅漑水の不飽和鉛直浸透に伴う物質の移動量を定量化する目的で,新たな採水装置の開発を行った。この装置では,吸引瓶に接続されたポーラス板を水平に埋設して吸引採水を行うが,その際,ポーラス板直上のマトリックポテンシャルおよび採水断面に隣接する自然状態の断面の同深度におけるマトリックポテンシャルを3秒おきに計測し,両者が一致するように吸引圧を自動制御している。これによって採水断面では,土層上端の境界条件(水分フラックス=降雨強度や潅漑強度)と下端の境界条件(水理ポテンシャル)が自然断面と等しくなるため,自然状態に等しい不飽和土壌水の移動が維持されることになる。 開発した採水装置を,京都大学付属演習林内に採水深度30cmで設置した。設置場所の周辺には数種の落葉樹および常緑樹が疎植されているが,ポーラス板を埋設したのは樹冠による被覆の無い場所であった。5月から8月にかけての101日間の連続採水期間中に,410.3mmの降雨が観測され,積算採水量は280.5mmと降雨の68.4%を占めた。採水期間を通して,ポーラス板直上のマトリックポテンシャルと隣接する自然断面のマトリックポテンシャルはほぼ等しく維持され,水分状態の撹乱を最小限に抑えた採水が行えることが示された。採取された土壌水のSiO_2濃度はおよそ20mg/lで,採水期間中に約5g/m^2のSiO_2が風化によって流出したことがわかった。一方,採水期間中に約1.1g/m^2のNO_3^-が降雨によってもたらされるが,植物根系による吸収のため,N03^-は表層30cmの土壌からは流出しないことがわかった。以上のように,本研究で開発した採水装置を用いることで,不飽和土壌中の溶質移動の定量化が可能となった。
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Research Products
(1 results)