2000 Fiscal Year Annual Research Report
エバネッセンス場照明を利用した抗原抗体反応検出に関する研究-迅速マグロ種判別システム開発の試み-
Project/Area Number |
12760138
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Research Institution | 東京水産大学 |
Principal Investigator |
潮 秀樹 東京水産大学, 水産学部, 助教授 (50251682)
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Keywords | 抗原抗体反応 / マグロ / エバネッセンス / 蛍光 / 1分子イメージング |
Research Abstract |
大西洋まぐろ類保存国際委員会勧告に従い,我が国では一部の国からのクロマグロ輸入禁止措置をとっているが,税関での種判別に現時点では数時間を要するミトコンドリアDNAを用いる手法が採用されている.本手法は確実なものであるが,生ものを扱うには要する時間が長すぎることが大きな問題となっており,さらに簡便迅速な手法が要求されている.一方,抗原抗体反応は種特異的な抗体が得られれば有望であるが,その反応に平衡化および洗浄ステップを必要とし,全行程では数時間を要する.そこで本研究では,抗原抗体反応を用いた検出法における平衡化および洗浄ステップを省略するため,蛍光ラベルおよびエバネッセンス照明場検出法の適用を試みた. まず,大西洋クロマグロ,太平洋クロマグロおよびミナミマグロの筋肉水溶性タンパク質画分に対するモノクローナル抗体を作製した.このうち,異なるエピトープを認識する抗パルブアルブミンモノクローナル抗体を3-amino-propyltri-ethoxysilaneでアミノ基を誘導したカバーグラスにglutaraldehydeを介して化学架橋した.コイパルブアルブミンをtetramethylrhodamine-isothiocyanateで標識した(TRITC-cPA).532nmのレーザーを開口数1.4の対物レンズに導入し,有効照明域外に光束を移動した後,TRITC-cPAを滴下した. 抗原1分子を示す光粒子が抗体に捕捉され,遊離していく状態が観察された.これをDVビデオに記録し,パーソナルコンピューターを用いて画像解析を行ったところ,抗原が抗体に捕捉される時間は粒子ごとに不均一であった.これは,抗原抗体反応は1分子レベルで観察すると確率的に生じるものであり,ELISAなどで平衡状態に達したものとは,全く異なることが確認された.捕捉時間の平均は,約0.5秒と非常に短かったが,この原因として,固相化した抗体がモノクローナル抗体であること,パルブアルブミンの直径が2nm以下であるのに対して抗体の抗原結合部位間の数nm以上と抗原を二価で捕捉することができないことなどから,親和性が低かったためであると予想される. 以上の本年度研究結果から,エバネッセンス場照明を用いることにより,高感度かつ迅速な抗原抗体反応検出法の原理的構築が十分に可能であることが明らかとなった.
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