2000 Fiscal Year Annual Research Report
東アジアの農村協同組合の経験と中国への移転の可能性
Project/Area Number |
12760143
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
朴 紅 北海道大学, 大学院・農学研究科, 助手 (80312396)
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Keywords | 中国三江平原 / 国有農場 / 水田開発 / 稲作経営 / 沿海部 / 農業合作社 / 韓国中山間地域 / 農村構造 |
Research Abstract |
本年度では、中国、韓国、台湾、そして北海道の農村調査が行われ、そのなかでも、中国三江平原の国有農場の実態調査が中心となった。以下では、その研究の概要を紹介する。 黒竜江省の稲作は急速に拡大を見せており、WTO加盟によって東北農業の主産品である小麦、トウモロコシ、大豆が打撃を受けることが予測されていることから、今後戦略作物として稲作生産への傾斜が一層強まると考えられる。事例とした新華農場は、中規模の国有農場として、農場長責任制のもとで、日本を含むコメ輸出に積極的な姿勢をみせる農場であり、輸出品種の導入や精米施設の設置などで注目を集めている。 農場・生産隊・職工農家はそれぞれの特徴を持っているが、第一に、国有農場は、農墾総局ならびに管理局の強い管轄下にあるとはいえ、農場長責任制のもとで独自性を強めている。さらに、輸出戦略を含む良質米生産の拡大は、種子公司による種苗確保を前提としており、各生産隊の「生産基地」化を図っている。第二に、生産隊に関しては、畑作と異なり独自の生産的機能を有しないが、「大農場」と「小農場」の結節点として、職工農家の営農計画の取りまとめやそれを基礎とした生産資材の供給・融資・税金の徴収などの取り次ぎ業務を行い、稲作技術指導の末端組織ともなっている。第三に、職工農家についていえば、異地入植者を含め開田投資を負担しうる者のみが畑作から稲作への転換を行い、井戸灌漑によるため、自己完結性が強い。経営収支をみても、現在の米価水準で農場への重い賦課金の支払い能力を有しており、経営は安定している。農場へインテグレートされてはいるものの、それは契約関係によるものであり、そのことは品種選定などに現れている。 以上のように、国有農場における稲作経営への転換は、農場という旧来の枠組みの中とはいえ、新しい農村組織化の一つのタイプとして位置づけることができるのである。
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Research Products
(3 results)
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[Publications] 朴紅,坂下明彦,〓志剛: "中国三江平原における国有農場の水田開発と稲作経営"農経論叢. 第57集. 85-98 (2001)
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[Publications] 黒河功,朴紅,坂下明彦: "中国沿海部における農業合作社の展開と類型"農経論叢. 第57集. 99-108 (2001)
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[Publications] 糸山健介,坂下明彦,朴紅: "韓国中山間地域における農村構造"農経論叢. 第57集. 109-120 (2001)