2001 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12760180
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Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
安江 健 茨城大学, 農学部, 助教授 (10270852)
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Keywords | 無牧柵放牧 / 移動行動 / GPS / 温熱環境要素 / 植生環境要素 / 日本短角牛 / 国有林野 / 林間放牧 |
Research Abstract |
昨年度の方法論上の問題点を克服するとともに、今年度は新たにGPSを5台に増設して調査を実施した。川上牧野組合が放牧する日本短角種繁殖牛37頭から5頭を選定し、首輪型GPS装置を装着し、2時間間隔で位置データを自動記録した。同時に、牛群の生活域の中心となる3つの地域に無人気温観測器を8〜9地点、計30地点に設置し、1時間間隔で気温データを記録した。毎月1週間程度の現地調査を実施し、GPSによる位置データおよび自記温度計による気温データを回収したほか、8植生区分、計15カ所の林班でコドラート法による植生調査を実施した。得られた結果は以下の通りである。(1)位置データの回収率は63〜93%であり、アンテナの調整によってデータ回収率は飛躍的に増加した。また気温データの回収率は100%であり、これらの放牧期間中を通しての連続記録がほぼ達成できた。(2)位置データの推移から1日当たりの移動距離を算出し、放牧期間通しての移動距離の周期を日単位で解析したところ、当地での放牧経験の長い3頭の個体には1、2、4、8、16日という倍数周期で長距離移動が発現していた。(3)いずれの個体も移動距離と牧野内平均気温、最高気温の間に正の相関(いずれもP<0.01)が認められ、気温が高いほど移動距離が長くなった。しかし相関係数自体は0.13〜0.30といずれも小さかった。(4)位置データを日単位で結んだ面積を1日行動圏として算出し、植生データとの関連を解析した結果、行動圏面積は可食植物の現存量ではなく、粗タンパク質含量との間に強い正の相関(r=0.95:P<0.01)が認められ、下草の質が良好な季節、場所では行動圏が広くなった。(5)以上の結果から、無牧柵放牧牛は2^xを基本とする移動周期を有し、牧野内の気温、下草の質に応じて活動域を調節する移動戦略であることが明らかとなった。
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Research Products
(1 results)