2001 Fiscal Year Annual Research Report
イヌにおけるグルタミン酸輸送体の遺伝的変異とその病態生理学的意義
Project/Area Number |
12760212
|
Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
佐藤 耕太 鳥取大学, 農学部, 講師 (50283974)
|
Keywords | グルタミン酸 / 輸送体 / 赤血球 / 転写 / 遺伝性疾患 |
Research Abstract |
グルタミン酸輸送体は哺乳動物の中枢神経系に発現する膜蛋白質であり,細胞外グルタミン酸を取り込み,神経細胞を保護している.現在までに,申請者らは日本犬にGLAST遺伝子にGLAST蛋白質の早期分解を誘発するアミノ酸置換(Gly492Ser ; G492S)および転写効率の低下が存在することを明らかにした.本研究では,これらの変異によるGLAST発現量低下の分子機序を解明するために,G492Sの発現量に及ぼす影響およびGLAST遺伝子の転写調節領域の解析を行った. 前年度に確立したヒト赤芽球系細胞株における恒常的GLAST発現系において,GLASTにおけるアミノ酸置換は発現量に大きな影響を及ぼさず,アミノ酸置換のみでは発現に影響しない,あるいは赤芽球の成熟,段階あるいは犬に特異的な調節機構の存在が示唆された. 一方,犬GLAST遺伝子の転写調節機構を解明するために,転写調節領域を含むGLAST遺伝子5'上流領域について分子クローニングを行い,その転写活性測定のためのルシフェラーゼレポーターアッセイ系を確立した.本領域はGC配列に富みTATA配列を欠くhouse keeping遺伝子の特徴を有しており,GLASTが犬において全身臓器に発現している事実を裏付けるものと考えられた.またいくつかの転写因子結合配列(GC配列,CCAAT配列など)が含まれており,これらの配列が発現調節に重要な役割を果たしているものと考えられた.また,本領域の赤芽球における発現誘導活性は定状状態では数倍から4倍程度であったが,分化誘導刺激により数十〜数百倍に転写活性が増加することを明らかにした.このような分化誘導刺激下における反応性の相違はGLAST発現量の差異に結びついているものと考えられ,現在,遺伝性GLAST欠損症の犬のGLAST遺伝子転写調節領域の解析を行っている.
|
Research Products
(3 results)
-
[Publications] Sato, K.et al.: "Inherited defects of sodium-dependent glutamate transport mediated by glutamate/aspartate transporter(GLAST)in canine red cells"J Biol Chem. 275. 6620-6627 (2000)
-
[Publications] Sato, K.et al.: "Cloning and characterixation of excitatory amino acid transporters GLFland EAAClin canine brain"J. Vet. Med. Sci.. 63. 987-1002 (2001)
-
[Publications] 佐藤耕太, 稲葉睦: "犬赤血球における遺伝子性グルタミン酸/アスパラギン酸輸送体(GLAST)欠損症の分子機序"獣医生化学. 37. 57-64 (2000)