2001 Fiscal Year Annual Research Report
ATP受容体の活性化による網膜神経層細胞の増殖制御
Project/Area Number |
12770022
|
Research Institution | Nara Medical University |
Principal Investigator |
杉岡 美保 奈良県立医科大学, 医学部, 助手 (90322370)
|
Keywords | アデノシン三リン酸 / カルシウム動員 / 容量性カルシウム流入 / 細胞増殖 / 細胞周期 / 網膜 / 神経上皮 / DNA合成 |
Research Abstract |
神経発生期の網膜神経層において、ATP受容体の活性化による細胞内カルシウムストアからのカルシウムイオンの放出(カルシウム動員)及びストアの枯渇により活性化される細胞外からのカルシウムイオンの流入(容量性カルシウム流入)が、細胞増殖期に特異的に生じることを既に報告している。本研究では、カルシウム感受性蛍光色素を負荷した鶏胚網膜神経層の伸展標本に共焦点レーザー蛍光顕微鏡を用いて得た光学的断層像から、ATP受容体の活性化によるカルシウム動員及び容量性カルシウム流入が細胞周期のどの時期で生じるかを検討した。増殖中の網膜神経上皮細胞の細胞体は細胞周期の進行に伴って神経上皮内をエレベータ運動しており、DNA合成期(S期)には内層に、細胞分裂期(M期)には外層に存在し、最終分裂を終えた細胞(網膜神経節細胞)は最内層に移動して神経網膜の層構造を形成し始める。昨年度は、ATP受容体の活性化によるカルシウム動員が、内層の細胞(S期細胞)の細胞体で顕著に起こり、外層の細胞(M期細胞)及び最内層の細胞(網膜神経節細胞)では痕跡的であることを明らかにした。今年度は、容量性カルシウム流入がS期細胞では細胞体のみならずその外側突起で顕著に見られ、M期細胞及び網膜神経節細胞では見られないことを明らかにした。さらに、S期細胞では外側突起から細胞体へと連続してカルシウムストアが存在し、また細胞体で核膜が小胞体とともにカルシウムストアを形成していることを明らかにした。ATP受容体の活性化によるカルシウム動員及び容量性カルシウム流入が細胞増殖の制御に関与することを既に報告しているが、本研究からこの増殖制御は、S期において、容量性カルシウム流入により外側突起内のストアに充填されたカルシウムイオンが、ATP受容体を介したカルシウム動員により放出されて核内へ運ばれ、DNA合成を制御することによるもの、と考えられる。
|
Research Products
(2 results)