2000 Fiscal Year Annual Research Report
褐色脂肪細胞における一酸化窒素を介する熱産生調節機序の解明
Project/Area Number |
12770029
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Research Institution | Asahikawa Medical College |
Principal Investigator |
内海 計 旭川医科大学, 医学部, 助手 (90271759)
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Keywords | 褐色脂肪細胞 / 一酸化窒素 / 一酸化窒素合成酵素 / e-NOS / 寒冷暴露 / ラット |
Research Abstract |
褐色脂肪組織(BAT)の血流および代謝は,BAT交感神経終末からのノルアドレナリン(NA)により調節されている.血流増加の調節機序は,NAが一酸化窒素(NO)依存性の血管拡張を引き起こすことによる.さらに,NOは直接的にBATの代謝に関与する可能性が示されている.しかし,これらのNOを産生する一酸化窒素合成酵素(NOS)のアイソフォームは不明である.NOSは構成型および誘導型アイソフォームに分類され,誘導型の発現は主に転写レベルで調節されている.BATに見られるNAによる血流増加は一分以内に生じる急峻な反応である.従って,この反応は誘導型NOS由来のNOではなく,構成型NOS由来のNOに起因すると考えられる.本研究では今年度,BATで産生されるNOがいずれのNOSアイソフォームに由来するかを確定するため,ノーザンブロットによる遺伝子レベルおよびウェスタンブロットによるタンパクレベルの発現解析を行い,現在以下の結果を得ている. 1.2種の構成型NOS(血管内皮型あるいは脳型)の発現を検討した結果,BATおよび分離褐色脂肪細胞は血管内皮型(e-)NOSのみを強く発現していた.一方,この発現はミトコンドリア分画には見られなかった. 2.交感神経活動を亢進させる寒冷刺激はe-NOSmRNAの発現を基礎レベルの約3倍に増加させた. 3.誘導型NOSの発現を検討した結果,BATに僅かの発現が見られた.しかし,寒冷刺激はこの発現レベルに影響しなかった. 以上の結果より,BATにおけるNO産生は褐色脂肪細胞に発現するe-NOSを介する反応と推測される.さらにe-NOSの活性および発現は交感神経により制御され,産生されるNOはBATの血流のみならず代謝にも直接関与する可能性を示唆する.来年度は培養細胞を用いe-NOSの活性と発現を制御しながら,NOが褐色脂肪細胞の代謝に及ぼす影響を検討する.
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